マレーシアにおける米輸入市場への政府介入

マレーシアにおける米輸入市場への政府介入

タイトルマレーシアにおける米輸入市場への政府介入
要約マレーシアの米輸入自由化について検討した結果,食糧庁は民営化され株式会社となったものの,政府・政権与党は株式保有を通じて同社の経営実権を掌握しており,国家による米輸入の一元的管理体制が持続しているに等しいことを指摘した。
担当機関農業総合研究所 海外部 アジアアフリカ研究室
連絡先03-3910-3792
区分(部会名)農林水産政策
区分(部会名)農業経済
分類行政
背景・ねらいWTO・AFTA体制下にあって,農産物を含む貿易自由化交渉が活発化しており,東南アジア諸国は一層の貿易自由化・規制緩和に向けた努力が求められている。一方,経済成長の著しいNIES諸国では,国民経済に占める農業の位置が低下し,「食料問題」から「農業問題」への転換が起こりつつある。工業製品輸出を経済成長の原動力とするこれら諸国では,対外的には貿易自由化が避けられないが,対内的には政権維持のために農民保護的政策の採用が求められている。そこで本研究では,食料純輸入国であるマレーシアを事例対象として,自由化・規制緩和という世界的趨勢の中で,国内米産業の保護という農民の政治的要求を受けて,マレーシア政府がどのような形で米輸入市場に介入しているのかを解明することを目的とした。
成果の内容・特徴
  1. 米輸入国であるマレーシアでは,1970年代半ば以降,食糧庁(LPN)による米貿易の一元的管理が行われていた(図1)。しかしGATT・WTOおよびAFTA対策として,米輸入の国家管理制度の見直しが行われ,1996年に食糧庁の完全民営化(民営化後の社名はBERNAS社)が実施された。
  2. しかし現在でも,政権与党および政府は,傘下の企業やダミー会社を仲介して,米輸入の独占ライセンスが付与されたBERNAS社の株式の大半を実質的に保有している(図2)。
  3. この事実に加えて,BERNAS社の経営陣を概観すると,政権与党の有力政治家や農業省・国内消費者問題省などの官公庁に関係が深い人物がBERNAS社の社長と取締役に就任している(図3)。
  4. 上記2.および3.の結果から,政府あるいは政権与党がBERNAS社の経営実権を掌握しているのは明白である。つまり,1990年代に入り米輸入自由化に向けた制度改革が実施されたものの,80年代と同様に90年代においても,国家による米輸入の一元的管理体制が持続しているに等しいと結論できる。
  5. 以上を要約すれば,マレーシアでは,自由化・規制緩和という世界的趨勢の中で農業(農民)保護という政治的要請に応えるべく,ジレンマの産物として,形式的な民営化と実質的な国家管理が行われているといえる。
成果の活用面・留意点GMO農産物の流通や消費動向に関しては,事態が非常に流動的であるので,本研究成果の現実妥当性についても慎重な判断が必要である点,留意すべきである。
具体的データ
(図1)
(図2)
(図3)
予算区分経常
研究期間1999~2001
発表論文農産物貿易の自由化と政府介入,農総研季報,第43号,1999年
発行年度1999
収録データベース研究成果情報

研究成果情報アクセスランキング

Copyright 2017 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター

Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat