カタクチイワシ卵稚仔魚の移入と成育に及ぼす親潮系水の影響

カタクチイワシ卵稚仔魚の移入と成育に及ぼす親潮系水の影響

タイトルカタクチイワシ卵稚仔魚の移入と成育に及ぼす親潮系水の影響
要約春季、鹿島灘周辺の黒潮系暖水域から親潮系冷水域のカタクチイワシ卵稚仔の分布を調査し、採集海域ごとに仔魚の成長を検討した。卵や前期仔魚は水温の高低に関係なく全点に分布していたのに対し、後期仔魚は表面水温15℃未満の冷水域では採集されなかった。後期仔魚の成長は、高水温域では全体的に高かったのに対し、低水温域では一部成長の悪い個体が認められた。
担当機関茨城県水産試験場 沿岸資源部
連絡先029-262-4158
区分(部会名)水産
専門資源生態
研究対象カタクチイワシ
分類研究
背景・ねらい鹿島灘における春季カタクチイワシシラス漁は、黒潮系暖水が波及し沿岸水温が高いときに豊漁になり、親潮系冷水が波及し水温が低いときに不漁になることが知られている。しかし、そのメカニズムには不明な点が多い。近年、カタクチイワシ稚仔魚の耳石の輪紋を解析することで、過去の成長の良し悪しを判定する技術が確立された。この技術を用いて、暖水と冷水域で成育する稚仔魚の成長を比較した。
成果の内容・特徴
  1. 1996年6月上旬に、北緯35度20分~36度10分、東経140度50分~141度00分の海域で、南北方向に観測線を設定し、計8点で、夜間、卵稚仔魚分布調査および海洋観測を行った(図1)。後期仔魚の耳石日周輪から成長速度を推定し、採集地点間で比較した。
  2. 北緯35度30分~35分間に表面水温が3.3℃変化する海洋前線が形成され、海洋前線以南の表面水温は19℃台で、前線以北は14~16℃であった。
  3. 卵や内部栄養期の前期仔魚は水温の高低に関係なく全点に分布していたのに対し、後期仔魚は海洋前線周辺だけに分布し、特に表面水温15.0℃以下の海域では採集されなかった(図2)。
  4. 後期仔魚の採集直前5日間の成長は、表面水温19.5~19.6℃の海域では全体的に高かったのに対し、15.1~16.3℃の海域では一部成長の悪い個体が認められた。
  5. 以上から、カタクチイワシ卵が後期仔魚まで成育するためには、15℃以上の水温環境が必要で、冷水環境と遭遇した卵や前期仔魚の生き残りは悪いと推察された。また、高水温域に形成される海洋前線には、多数の後期仔魚が分布しており、この海洋前線の離接岸が沿岸域への後期仔魚の移入に影響を及ぼしていると考えられた。
  6. 1996年春季、鹿島灘におけるカタクチイワシシラス漁は不漁に終わったが、原因として、黒潮系暖水による後期仔魚の移入がなかったことに加え、低水温の沿岸域に運ばれた卵や前期仔魚の成育が不適だったことが考えられる。
成果の活用面・留意点さらに、様々な成育環境下から稚仔魚を採集し、水温以外の成長に影響を及ぼす環境要因を抽出する必要がある。
具体的データ
図表
図表
予算区分県単事業
研究期間1992~1997
研究担当者児玉 正碩、二平 章、冨永 敦
発表論文平成8年度日本水産学会秋季大会要旨集,1996
発行年度1997
収録データベース研究成果情報

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