流域貯留量を用いたダム堆砂量の推定・評価法

流域貯留量を用いたダム堆砂量の推定・評価法

タイトル流域貯留量を用いたダム堆砂量の推定・評価法
要約ダム管理事務所等で、日常業務として蓄積している日単位の基本水文・気象データを用いてダム堆砂量を推定・評価する方法である。地質や植生、土地利用などの詳細な流域データを直接使用せず、ダム流域の流域貯留量を基に実績堆砂量を評価できる。
キーワードダム堆砂、流域貯留量、利水貯留量、総合貯留量、比流砂量、捕捉率
担当機関(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 施設資源部 水路工水理研究室
連絡先029-838-7565
区分(部会名)農村工学
分類参考、行政、技術
背景・ねらい新規のダム建設数が減少し、既設ダムの有効活用が重要な課題になっている。ダム堆砂量の予測精度向上は既設ダムのサイクルマネジメントを成功させるための鍵であるが、そのためには流域の地質、水文、土地利用等に関する膨大で詳細な調査が不可欠である。本研究は、既設ダムを対象として、堆砂原因に関する詳細調査を見通しよく進めるため、入手容易な既存データを有効に使ってダム堆砂量の標準的な値を概略推定し、ダム流域の持つ特性を考慮して現況評価する方法の確立を目指したものである。手法の提案とともに、国内22サンプルのダムデータを基に本手法の適用性を検証する。
成果の内容・特徴
  1. 堆砂量の推定・評価に使用するデータは図1の通りである。ET(蒸発散量)の推定にはMakkink法を用い、必要なデータは全てアメダスから入手できる。
  2. 三野(1994)および堀野ら(2001)により提案された流域貯留量の計算法をダム上流域に適用し、図1データにより供給持続可能曲線を作成してダム流域の利水貯留量Vnを、また、R~ET~Qinの日時系列から総合貯留量Vtを求める。
  3. ダム流域の貯留量を図2の2つの成分VquickとVslowに分けて考える。Vslowは、降雨後に地下浸透を主要な経路として比較的ゆっくりと貯水池内に流入する貯留量成分である。Vquickは、Vslow以外の貯留成分であり、降雨後に地表水や浅い地下水、側方流などの経路を辿って比較的速く貯水池内に達する貯留量成分である。本研究では、Vt~VnがVquickに相当し、VnがVslowに相当するものと考える。
  4. 流域の降水が最終的に貯水池に到達するまでの移動過程を考慮すれば、ダム流域の侵食と土砂輸送に寄与するのはVquickであると考えられる。図3は、22地区のダム流域データから算定したVquickと流域ベースの比流砂量qtとの関係を表している。図中の近似式は、ダム堆砂実績値に基づく標準的な推定値を定める式として使用できる。標準値から外れるプロットについては、地域特有の流域特性を疑い、次の評価に進む。
  5. 図4は、図3と同地区の流域実績データに基づいた、qtとVquick、Vslowの関係を表している。qtの大小分布は、VquickとVslowによって概ね領域区分できると考えられる。区分の実例として、図中に比流砂量の許容範囲qt<750m3/k㎡/yrが直線で区分されている。比流砂量許容値の設定により、直線はαとβの2種類の定数で決定される。ここに、tanαは、VquickとVslowの比(傾き)を表し、流域の貯留、流出形態などの特性を表す指標であると推察される。βは、数式上は許容比流砂量に対してVslow=0(一切の浸透が無い)ときのVquick上限値(切片)であり、物理的には、河川密度や流域形状などの地形特性に基づく一時的な湛水、貯留能力の上限値を表すものと推察される。
成果の活用面・留意点
  1. 本推定法は、ダム管理に携わる全ての技術者、研究者の利用を想定しており、治水・利水を問わず流域特性の異なる流域相互比較のための共通的物理基盤を提供する。
  2. α、βの物理的意味の解釈については、今後も実績データを収集して検証を続ける必要がある。
  3. 日単位よりも短時間で収束する物理現象は考慮されない。
具体的データ
図1
図2
図3
図4
予算区分交付金研究
研究期間2007~2009
研究担当者樽屋啓之、向井章恵、田中良和
発行年度2009
収録データベース研究成果情報

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