パンコムギ大粒澱粉のアミロペクチンには超長鎖の存在は認められない

パンコムギ大粒澱粉のアミロペクチンには超長鎖の存在は認められない

タイトルパンコムギ大粒澱粉のアミロペクチンには超長鎖の存在は認められない
要約Wx-D1座の複対立遺伝子の違い以外の遺伝的背景がほぼ同一なパンコムギ系統の大粒澱粉から、コンカナバリンA法を用いて精製したアミロペクチン(AP)には分子量105程度以上の超長鎖は認められず、APのヨウ素複合体の特性や側鎖長分布にも、系統による違いは認められない。
キーワードアミロペクチン、側鎖長分布、超長鎖、パンコムギ、Wx-D1座
担当機関(独)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター パン用小麦研究近中四サブチーム
連絡先084-923-4100
区分(部会名)作物
区分(部会名)近畿中国四国農業
専門作物生産
分類研究、普及
背景・ねらい通説では、ウルチ性澱粉のアミロペクチン(AP)には、アミロース(AM)生合成に関与する顆粒結合性澱粉合成酵素(GBSSⅠ)により生成される分子量105程度以上の超長鎖が存在するとされている。パンコムギにおいてGBSSⅠの生合成を支配するWx-D1座には複対立遺伝子があり、機能が異なるGBSSⅠを合成するため、遺伝的背景がほぼ同一でAM含量が異なる系統が存在する。そこで、これらの系統の澱粉からコンカナバリンA法でAPを分離精製して、GBSSⅠの機能の違いとAPの構造や特性との関連を見いだす。
成果の内容・特徴
  1. 関東107号の遺伝的背景をもつウルチ・モチ性準同質遺伝子系統(Wx-D1座の対立遺伝子:Wx-D1a、Wx-D1d)および低アミロース性突然変異系統(Wx-D1f、Wx-D1g)の穀粒から調製した大粒澱粉は、それぞれの系統に特有なAM含量をもつ(表1)。
  2. 大粒澱粉からコンカナバリンA法を用いて分離精製したAP(精製AP)のヨウ素複合体の極大吸収波長(λmax)には、系統による違いは認められない(表1)。この結果は精製APの平均側鎖長が同等であることを示し、ウルチ性澱粉のAPにも超長鎖がないことを示唆する。
  3. 精製APの側鎖をイソアミラーゼで切断したイソアミラーゼ分解物を高速サイズ排除クロマトグラフィー・示差屈折率検出法(HPSEC-RID)で測定すると、超長鎖のピークは認められない(図1、実線)。また,側鎖長分布には、系統による違いは認められない(図2)。
  4. イソアミラーゼ分解物を高速陰イオン交換クロマトグラフィー・パルスドアンペロメトリー検出法(HPAEC-PAD)で測定した側鎖長分布には、系統による違いは認められない(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. ウルチ性澱粉のAPに超長鎖が存在するとの報告が公表されて以来、AP中の超長鎖の割合と澱粉特性等との関連が解析され、APの生合成にGBSSⅠが関与するモデルが提案されている。本成果情報は、通説は誤りで、ウルチ性パンコムギ澱粉のAPには超長鎖が存在しないことを初めて示したもので、APの超長鎖に関連するこれまでの研究の再検討を迫る新知見である。
  2. 使用した系統のAPの構造に違いが認められないので、研究担当者がこれまでに報告してきた、これらの系統間における澱粉の特性の違いは、AM含量の違いに起因すると結論できる。
  3. APの分離精製法としてコンカナバリンA法を用いている。その理由は、従来用いられていた1-ブタノール等を用いるAM沈殿法では上清であるAP画分に数%のAMが残存するとされ、ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量分画法ではAPとAMの分離が不十分なため、これらの方法では、APを十分に精製することができないと判断したためである。
  4. 試料中の大粒澱粉と小粒澱粉の割合の違いが側鎖長分布等の特性に影響するのを避けるため、小粒澱粉を除き,大粒澱粉のみを用いている。
  5. APの側鎖を市販イソアミラーゼで切断し、HPSEC-RIDで測定する際、イソアミラーゼ懸濁液中の硫酸アンモニウム由来の硫酸イオンによる妨害がある(図1、点線)。この妨害は、等モル以上の量のバリウムイオンを添加することにより除去できる。
具体的データ
表1
図1
図2
図3
予算区分基盤
予算区分科研費
研究期間2006~2009
研究担当者安井 健、芦田かなえ、佐々木朋子
発表論文1) Yasui T. et al. (2009) Starch/Starke 61(12): 677-686
発行年度2009
収録データベース研究成果情報

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