北海道に来遊するトドの起源とその来遊状況の変動要因を探る

北海道に来遊するトドの起源とその来遊状況の変動要因を探る

タイトル北海道に来遊するトドの起源とその来遊状況の変動要因を探る
要約北海道に来遊するトドの遺伝学解析と標識個体の追跡および再確認を行った結果、アジア系群の中でもオホーツク海北部や千島列島の繁殖場を起源とし、サハリンとの往来もあることを確認した。また繁殖期にロシアと共同調査を行い、サハリン・チュレニー島の個体数増加と繁殖期のサハリン南部上陸場の利用実態に関する知見を得た。
担当機関(独)水産総合研究センター 北海道区水産研究所 亜寒帯漁業資源部 生態系研究室
連絡先0154-92-1716
区分(部会名)水産
専門資源生態
研究対象とど
分類調査
背景・ねらい近年、トドの回遊経路は日本海側に偏っており、漁業被害も日本海側で甚大である。その要因として、日本海に最も近い繁殖場であるサハリン・チュレニー島での個体数増加や、南部のモネロン島での繁殖確認など最近年の動向が注目される。トドの資源管理においては、来遊数推定精度の向上に加え、来遊起源であるロシアの資源動向、分布の把握および系群構造の解析が重要な課題となっている。そこで本研究は、系群構造に関する知見を蓄積し、トドの資源管理への貢献を目的とし、(1)遺伝学的手法による系群解析、(2)サハリンにおける分布および繁殖状況の把握、(3)衛星標識装着個体の追跡、(4)標識-再確認調査を実施した。
成果の内容・特徴集団遺伝学的解析により、北海道来遊個体はアジア系群の中でも特にオホーツクおよび千島列島集団と遺伝的に近縁であることが明らかとなった(図1)。日本海沿岸の上陸場で継続的に行った標識個体の再確認調査により、来遊個体は千島列島(図2; A~E)およびオホーツク北部(図2;F、G)の繁殖場で出生したことが明らかとなった。猿払村で行った衛星標識による追跡調査では、来遊個体は越冬期間中必ずしも北海道に滞留せず、サハリン南部の海域を往来すること、繁殖期には一部はサハリン・チュレニー島に滞在し、また一部は宗谷海峡およびサハリン南部に滞在することが明らかとなった(図3)。2009年にはロシア科学アカデミーと共同で繁殖場調査を行い、サハリン南部の7つの上陸場で2,007頭(新生子11頭を含む)、繁殖場であるチュレニー島で最大2,043頭(新生子678頭を含む)を観察し、新生子数が年々増加傾向にあることを確認した(図4)。またチュレニー島では初めて新生子175頭への標識が行われた(図5)。
成果の活用面・留意点
  • サハリンを経由・起源とするトドが北海道に来遊していることが徐々に明らかとされつつあり、今後標識新生子の再確認調査を実施することで系群構造と北海道来遊個体の起源の更なる解明が期待できる。
  • また、これまで困難であった冬期日本海側での生体捕獲が可能となれば、漁業被害が甚大な日本海側でのトドの行動追跡により、トドによる漁業被害の発生機序と対策立案に役立てることができる。
  • 今回、初めてロシアとトドに関して共同調査を実施し、情報の共有と研究協力に関して強固な関係を構築することができた。今後、ロシア海域における対象資源の動態研究への展開が期待される。
具体的データ
図1
図2
図3
図4
図5
予算区分国際資源調査等推進対策事業委託費
予算区分有害生物被害軽減実証事業委託費
予算区分交付金(一般研究)
研究期間2004
研究担当者服部 薫、磯野岳臣、山村織生
発表論文服部薫. 2009. 第10章漁業被害問題-トドの回遊と消長. (加藤秀弘編)日本の哺乳類学3巻 水生哺乳類. 東京大学出版会. p. 254~280. ほか1件
発行年度2009
収録データベース研究成果情報

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