コナガ食害株への殺虫剤散布は天敵寄生蜂の寄主探索行動に影響を及ぼす

コナガ食害株への殺虫剤散布は天敵寄生蜂の寄主探索行動に影響を及ぼす

タイトルコナガ食害株への殺虫剤散布は天敵寄生蜂の寄主探索行動に影響を及ぼす
要約土着寄生蜂であるコナガサムライコマユバチは、コナガの食害を受けたコマツナが放出する匂い物質等を利用しコナガ食害株に飛翔定位する。一方、コナガ食害株に殺虫剤が散布されると、コナガ食害株への定位行動が殺虫剤の匂いで阻害される可能性がある。
キーワードコナガサムライコマユバチ、コナガ、寄主探索行動、殺虫剤、阻害効果
担当機関(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 総合的害虫管理研究チーム
連絡先029-838-8078
区分(部会名)共通基盤
区分(部会名)関東東海北陸農業
専門病害虫(虫害)
専門関東東海・病害虫(虫害)
分類研究、参考
背景・ねらいアブラナ科作物の重要害虫であるコナガは殺虫剤抵抗性を高度に発達させる難防除害虫であり、天敵寄生蜂による生物的防除が期待されている。コナガサムライコマユバチ(以下、コマユバチ)はコナガの有力土着天敵であり、本種を生物的防除に用いる上で、作物上に散布される各種殺虫剤がコマユバチの行動に及ぼす影響を理解する必要がある。

コマユバチを含む多くの天敵寄生蜂は、害虫(寄主)の食害を受けた作物が放出する匂い物質等を指標として害虫食害作物に飛翔定位(以下、定位行動)し、定位後は食害作物上で歩行探索を行い(以下、寄主探索行動)害虫を発見する。寄主探索行動に及ぼす影響に関しては各種殺虫剤による阻害効果が報告されているが、定位行動への影響についてはほとんど分かっていない。そこで、コマツナ・コナガ・コマユバチをモデル系として、各種殺虫剤が定位行動に及ぼす影響を解析する。
成果の内容・特徴
  1. コマユバチ雌成虫は、生物検定用の小型ケージ内において、未食害コマツナ株(水散布)よりもコナガ食害株(水散布)を選好する(図1)。未食害株(水散布)と殺虫剤を散布した食害株(散布後1時間風乾)を提示した場合、ペルメトリン乳剤は食害株への定位行動に影響を及ぼさないが、エトフェンプロックス乳剤やダイアジノン水和剤は定位行動を阻害する(図1)。
  2. 食害株(水散布)とダイアジノンを散布した食害株とを提示した場合、ダイアジノン散布後1時間から24時間経過した時点では定位行動に及ぼす阻害効果が検出されるが、散布後72時間経過した時点で阻害効果は見られなくなる(図2)。
  3. コナガ食害株(水散布)が放出する匂い物質にはベンジルシアニドが含まれる(図3)。本成分の合成品(クエン酸トリエチル溶媒200μl中に10mg含有、成分放出量は食害株と同程度)を設置した未食害株と溶媒を設置した未食害株とを提示した場合、雌成虫は合成品設置株を選好する(44vs.15個体、P<0.001、χ2-test)。本成分は未食害株では検出されないため、食害株への定位行動に関与している可能性がある。
  4. 食害株からのベンジルシアニド放出量はダイアジノン散布後の経過時間によって有意に変動しない(図3)。一方、ダイアジノン散布後1時間から24時間経過した時点では、ベンジルシアニドに比べて大量のダイアジノンが食害株から揮発成分として放出されるため、食害株に対する定位行動に影響が生じるものと思われる(図4)。また、散布後72時間経過した時点でダイアジノンの揮発量は少なくなり、阻害効果が弱まるものと思われる(図4)。
成果の活用面・留意点
  1. 本試験の手法は、様々な天敵寄生蜂の定位行動に及ぼす殺虫剤の影響評価に用いることができる。
  2. 寄生蜂の定位行動に影響を及ぼす主な揮発成分が殺虫剤の有効成分(原体)であるか、その他の成分(溶剤等)であるかについては今後詳細に研究する必要がある。
具体的データ
図1
図2
図3
図4
予算区分科研費
研究期間2007~2009
研究担当者下田武志、河津 圭、屋良佳緒利
発表論文1) Kugumiya S. et al. (2010) J. Chem. Ecol. 36: 620-628
2) Kawazu K. et al. (2010) J. Appl. Entomol. 134: 313-322
3) Kawazu K. et al. (2011) J. Appl. Entomol.DOI: 10.1111/j.1439-0418.2010.01596.x
発行年度2010
収録データベース研究成果情報

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