タイトル | トレハロースを用いたトレニア培養植物の長期維持方法 |
要約 | トレニアの培養植物の維持管理において、培地の糖をトレハロースにすることで、スクロースの場合の2倍以上の期間(最大2.5か月間)、植物体を健全な状態で維持できる。それにより、維持管理に掛かる時間・経費・労力の大幅な低減が可能となる。 |
キーワード | 組織培養、炭素源、長期維持、トレニア、トレハロース |
担当機関 | (独)農業・食品産業技術総合研究機構 花き研究所 新形質花き開発研究チーム |
連絡先 | 029-838-6822 |
区分(部会名) | 花き |
分類 | 研究、参考 |
背景・ねらい | 花きの多くは遺伝的に固定されていない。そのため、それらを材料に用いた遺伝子組換え花きでは、栄養繁殖による維持管理に多大な時間・経費・労力を必要としている。トレニアは非常に有用な花きのモデル植物であるが、作出した組換え植物の維持のため、従来のスクロースを炭素源とした培地では約25日おきに継代培養が必要であり、実験の拡大の制限要因となっている。トレハロースは植物ではイワヒバ、動物ではネムリユスリカなどで見られる、いわゆる「乾燥休眠」を担う糖としてのほか、動植物に様々な機能性を付与することが報告されている。植物の組織培養では、ファレノプシスにおいてプロトコーム状球体の増殖にトレハロースの添加が有効であることが示されているが、培養期間延長の効果に関する報告はない。そこで、トレハロースのトレニア培養植物の培養期間延長への効果を検討する。 |
成果の内容・特徴 | - トレニアの培養に従来用いているスクロース(濃度3%)をトレハロース(濃度3%)に置き換えるだけの簡便な方法で、挿し芽によるトレニア培養植物の生存期間が2倍以上(最大2.5か月間)になり、継代培養の間隔を従来の2倍(60日)に延長できる(図1)。
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成果の活用面・留意点 | - これまでに、スクロースをトレハロースに置き換えた培地を用いることで、形質転換トレニア約1,800系統を1年間にわたって平均60日の継代間隔で維持しており、経費と労力の大幅な削減に成功している。
- 培養期間が延長することにより、再分化時期が異なるシュートを一斉に順化することが可能となり、形質転換植物作成にかかる作業も効率化できる(図2)。
- トレニアでは、スクロースの培地から、初めてトレハロースの培地に移植する時に、一部生育不良となる株が発生する場合がある。
- 食品添加物として市販されている低価格のトレハロース(「お米にトレハ(H+Bライフサイエンス)」、トレハロース含有率98%以上)で同等の効果が得られる。
- 他の植物種への適用においては、生育不良となる株の発生に留意し、予備試験を行ってから用いる。
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具体的データ |
図1 |
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図2 |
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予算区分 | 基盤 |
予算区分 | イノベーション創出事業 |
研究期間 | 2007~2010 |
研究担当者 | 山口博康、佐々木克友、四方雅仁、間竜太郎、大坪憲弘 |
発表論文 | Yamaguchi and Sasaki (co-first author) et al. (2011) Plant Biotechnol. 28:263-266 |
発行年度 | 2010 |
収録データベース | 研究成果情報 |