森林土壌中を流れる物質の量をはかる

森林土壌中を流れる物質の量をはかる

タイトル森林土壌中を流れる物質の量をはかる
要約これまで測ることが難しかった森林土壌中の水と水に溶ける物質の移動量を、週から年の単位で正確に測ることができるようになりました。
担当機関(独)森林総合研究所 立地環境研究領域
(独)森林総合研究所 九州支所
区分(部会名)森林
背景・ねらい森林土壌中では様々な物質が水に溶けて流れています。その量を測ることは、森林生態系の立地環境に応じた物質循環や、生態系の外から流入する環境負荷物質の動きを解明する上で重要です。しかし、土壌中の微少なすき間をゆっくり流れる水の移動量は、土壌の湿り具合に応じて大きく変化するため、これまで正確に測ることができませんでした。本課題では、微細な穴が無数に空けられているセラミックの板(ポーラスプレート)を土壌中に埋め、周囲の土壌の乾湿に応じて吸引し、自然に移動する量だけの水を採取することにより、週~年の単位で土壌中の水と物質の移動量を正確に測定可能な方法を開発しました。
成果の内容・特徴

土壌中の水移動量

茨城県内の落葉広葉樹林の土壌に、微細な穴が無数にあるセラミックの板(ポーラスプレートと呼ぶ)を埋設し、周囲の土壌の乾湿に応じて吸引圧を変化させて、土壌中を移動する水を採取しました。ポーラスプレートは深さ30cmと深さ90cmに設置しました。
2009年の1年間に観測された森林の樹冠の下で測った雨(林内雨と呼ぶ)は、1295mmでした。これに対して深さ90cmで採取した土壌水の量、すなわち1年間の水移動量は938mmでした。データを3ヶ月ごとに区切って積算の林内雨量と土壌水移動量(深さ90cm)を比較すると(図1)、冬の落葉期には林内雨と水移動量がほぼ同じになりました。一方、夏の着葉期には水移動量は林内雨を大幅に下回りました。これは、樹木が落葉期には土壌から水を吸収せず、着葉期には盛んに吸収することを示しています。

土壌中のケイ素の移動量

ポーラスプレートで採取した水を持ち帰って分析を行い、物質濃度を測定すると、この濃度と水移動量から物質移動量を求めることができます。ここではまず一例として、ケイ素をとりあげます。ケイ素は、海や湖沼の植物プランクトンの一種であるケイ藻の増殖に欠かせない成分ですが、雨には含まれていないために、土壌を構成する鉱物の風化によって供給されます。土壌水のケイ素の濃度は、冬場に低く風化速度の高まる夏場に高くなる傾向が認められました(図2)。ただし、深さ90cmのケイ素の移動量を3か月ごとに比較すると、その変動パターンは濃度変化とは異なり、水移動量と同じように変化することから、ケイ素の移動量は水の移動量によって決まることが分かりました。

土壌中の溶存炭素の移動量

もう一つの例として、土壌水中に溶けている有機炭素(溶存有機炭素)をとりあげます。溶存有機炭素は、土壌中の微生物のエネルギー源となるとともに、土壌中の鉱物粒子と結びついて土壌有機物に変化します。土壌中の溶存有機炭素の移動量は、深さ30cm で年間1ヘクタールあたり12kg、深さ90cmで4.2kgと、深さを増すと濃度が低下する傾向が認められました。すなわちポーラスプレートによって、土壌水が移動する過程で土壌水に含まれる溶存有機炭素が土壌微生物によって分解されたり、土壌に蓄積されていくことが分かりました。
以上のように、ポーラスプレートを使う方法により、これまで難しかった土壌中の各種栄養塩類や炭素、窒素などの物質の移動量の測定が正確にできるようになり、森林生態系での物質循環の解明が大きく進むと期待しています。
具体的データ
図1
図2
図3
研究担当者小林 政広(立地環境研究領域)、釣田 竜也(九州支所)、吉永 秀一郎(九州支所)
発行年度2011
収録データベース研究成果情報

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