スズメバチの手強い寄生天敵スズメバチタマセンチュウ ―寄生されるハチの種類と国内分布が明らかに

スズメバチの手強い寄生天敵スズメバチタマセンチュウ ―寄生されるハチの種類と国内分布が明らかに

タイトルスズメバチの手強い寄生天敵スズメバチタマセンチュウ ―寄生されるハチの種類と国内分布が明らかに
要約キイロスズメバチやオオスズメバチなど人が刺されやすいハチには、スズメバチの女王を不妊化する寄生線虫がよく寄生し、しかも日本本土に広く分布していることを明らかにしました。
担当機関(独)森林総合研究所 九州支所
(独)森林総合研究所 北海道支所
(独)森林総合研究所 林木育種センター西表熱帯林育種技術園
(独)森林総合研究所 森林微生物研究領域
(独)森林総合研究所 森林昆虫研究領域
区分(部会名)森林
背景・ねらいスズメバチによる刺傷事故は林野作業や野外活動でも大きな問題となっています。そのため、危険生物であるスズメバチを防除する新技術の開発が求められています。北海道で近年発見された、スズメバチの寄生天敵であるスズメバチタマセンチュウを生物的防除の素材として利用するため、線虫が、どんなハチに寄生し、国内にどれくらい広く分布しているのかを調べました。その結果、キイロスズメバチ、オオスズメバチ、チャイロスズメバチに寄生し、関東や九州にも分布していることがわかりました。また、寄生されていたスズメバチは卵巣が発達せず、すべて不妊になっていました。オオスズメバチとキイロスズメバチは攻撃性が強く、刺傷事故の大きな原因となっていますので、スズメバチタマセンチュウを利用して刺傷被害を減らせる可能性があります。
成果の内容・特徴

スズメバチタマセンチュウと生物的防除

スズメバチによる刺傷事故は林野作業でも大きな問題となっています。そのため、危険生物であるスズメバチを防除する新技術の開発が求められています。近年、スズメバチに寄生する新種の線虫が発見され、「スズメバチタマセンチュウ」と名付けられました。私たちはこれまでこの線虫に寄生されたスズメバチの女王は卵巣が発達せず不妊化すること(図1)、また、スズメバチタマセンチュウは越冬中のスズメバチ(図2)に感染することを明らかにしました。この線虫をスズメバチに対する生物的防除素材として利用できる可能性があります。そのためには、線虫がどんな種のスズメバチに寄生するのか(宿主範囲)、そして、日本のどこに住んでいるのか(地理的分布)を調べなくてはなりません。

宿主範囲と地理的分布

スズメバチタマセンチュウはもともと北海道(札幌)のキイロスズメバチから見つかった天敵です。その後、北海道に生息している他のスズメバチ属4種を調べてみると、チャイロスズメバチにも寄生していることがわかりました。さらに、関東(茨城)、九州(熊本)、西表島など日本各地のスズメバチで線虫に寄生されているかどうかを調べたところ、西表島では見つからなかったものの、新たにオオスズメバチに対する寄生と関東や九州における寄生が確認されました。こうした調査の結果から、スズメバチタマセンチュウは、日本に生息するスズメバチ属7種のうち少なくとも3種に寄生していることと、日本本土に広く分布している可能性が高いことがわかりました(表1)。

生物的防除素材としての評価

オオスズメバチは世界最大のスズメバチで、毒性や攻撃性がきわめて強い危険生物です。また、キイロスズメバチも非常に大きな巣を作り攻撃性も強いため、毎年多くの刺傷事故をもたらしています。スズメバチタマセンチュウは、これら攻撃性の強い種を含めた3種のスズメバチに寄生することがわかりました。また、この線虫は日本本土のどこにでも分布している可能性が高いこともわかりました。この線虫に寄生されていたスズメバチの女王はすべて、卵巣が発達せず不妊になっていました。こうしたハチは巣を作ることができません。
スズメバチタマセンチュウは日本に昔から住んでいる在来種と考えられます。今後、この線虫を大量培養する技術ができ、宿主であるスズメバチに人工的に感染させることができれば、スズメバチの数を適切に制御して刺傷被害を低減するのに利用できる可能性があります。

本研究は科学研究費補助金(20380097)に支援され行われました。
具体的データ
図1
図2
表1
研究担当者小坂 肇(九州支所)、佐山 勝彦(北海道支所)、加藤 一隆(林木育種センター西表熱帯林育種技術園)、神崎 菜摘(森林微生物研究領域)、牧野 俊一(森林昆虫研究領域)
発行年度2011
収録データベース研究成果情報

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