ラオスにおけるテナガエビの生活史特性に基づいた資源管理手法

ラオスにおけるテナガエビの生活史特性に基づいた資源管理手法

タイトルラオスにおけるテナガエビの生活史特性に基づいた資源管理手法
要約ルアンプラバン県におけるテナガエビMacrobrachium yuiの生活史に関する野外調査の結果、雌は洞窟河川へ遡上し、その内部で主に7月から8月にかけて繁殖するとみられる。その生態的特性に基づき現地住民及び行政とともにテナガエビ漁の禁漁期を設定し資源管理を実施する。
キーワードテナガエビ、生活史、洞窟、資源管理、住民参加
担当機関(独)国際農林水産業研究センター 水産領域
区分(部会名)国際農林水産業
分類行政、主要普及成果
背景・ねらいインドシナ半島内陸部に位置するラオスにおいては数多くのテナガエビ類が生息し、水産資源として積極的に利用されている。中でも、ラオス北部に生息するテナガエビは、観光地でも高級食材として高値で取引され、地元住民にとって重要な現金収入源となっている。しかし、近年、乱獲や河川環境の悪化などにより、テナガエビの漁獲量が激減し、大きな問題となっている。本研究では、本種の資源回復及び資源の持続的利用を実現するため、分類学的検討、回遊パターン、繁殖場所、繁殖時期及び初期生活史を明らかにし、資源管理手法の開発及び普及に資する。
成果の内容・特徴
  1. ラオス北部で経済価値の高いテナガエビは形態的特徴からMacrobrachium yuiと同定される。
  2. テナガエビの体サイズ組成(幼生は除く)は生息流域によって異なり、洞窟河川では大型個体、本流河川では小型個体、そして森林河川では小型から大型個体まで幅広いサイズの個体が出現する(図1)。これは、本種が成長段階に応じて生息水域を移動することを示している。
  3. 抱卵雌は洞窟河川内部からのみ出現し、雌の生殖腺指数(生殖腺の発達度)は、7月から8月にかけて大きく減少することから、雌はおもにこの期間中に洞窟河川内で産卵する(図2)。
  4. 流下幼生は、10月から5月までの乾季の間、洞窟河川において出現し、すでに着底幼生に発達している(図2)。室内飼育実験において本種の幼生は、ふ化後、浮遊幼生期を経て1ヶ月後に着底することから、洞窟河川内部でふ化した幼生は着底するまで約1ヶ月間そこに留まる。
  5. テナガエビの資源回復及び持続的利用を図るため、生物学的特性(雌の抱卵数、繁殖する雌の数の季節的変化及び成長様式)に基づいた漁業モデルを作成し、洞窟河川における8月のテナガエビ漁の禁漁を軸とした漁業規則の原案(図3)の効果を評価したところ、現時の漁獲による死亡率の最適値(資源を持続的に維持できて、漁獲生産がもっとも高くなる値)より約3倍漁獲圧が高い状態において、相対漁獲量は現在よりも約30%増加することが推定される(図4)。
成果の活用面・留意点
  1. 生活史特性に基づいて策定された漁業規則の原案及びその漁業モデル予測を現地行政部局に提示し、ラオス農林省漁業規約第53条に基づき、ルアンプラバン県パクシアン郡においてテナガエビ漁に関する漁業規則が制定され、2011年8月から地方行政及び住民の主導で洞窟河川における8月のテナガエビ禁漁を開始している(図5)。
  2. 資源管理は成果が出るまでの住民のモチベーションを維持するのは難しい。毎年資源動態に関する情報を地域住民に周知させるとともに、モニタリング調査への住民参加もテナガエビの資源管理活動に対する住民の理解を得る上で重要である。
具体的データ
図1
図2
図3
図4
予算区分交付金[インドシナ農山村]
研究期間2006~2011
研究担当者伊藤 明(JIRCAS)、花村 幸生(水総研)、井口恵一朗(水総研)、大森浩二(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)、A.KounThongBang(ラオス水生生物資源研究センター)、O.Lasasimma(ラオス水生生物資源研究センター)、P.Souliyamath(ルアンプラバン県ナルワン水産試験場)
発表論文1.Hanamura et al. (2011) Zootaxa, 3025: 1-35
2.Ito et al. (2011) Catch and Culture, 17, (2):24-27
発行年度2011
オリジナルURLhttp://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2011/2011_11_k.html
収録データベース研究成果情報

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