甘味種コムギ全粒粉は糖やフルクタンに富み、パン酵母の発酵を促進する

甘味種コムギ全粒粉は糖やフルクタンに富み、パン酵母の発酵を促進する

タイトル甘味種コムギ全粒粉は糖やフルクタンに富み、パン酵母の発酵を促進する
要約甘味種コムギ種子中の糖濃度は、開花後25-30日に最も高くなる。その全粒粉は、糖以外にフルクタンを中心とする食物繊維に富む。また、その全粒粉配合は、製パン時の酵母の発酵を促進する。
キーワード甘味種コムギ、糖、フルクタン、食物繊維、遊離アミノ酸、製パン
担当機関(独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター 畑作園芸研究領域
連絡先019-643-3514
分類研究成果情報
背景・ねらい東北農研は、コムギの澱粉変異体であるモチコムギ(Wx)と高アミロースコムギ(HA)を開発している。Wxは、アミロース合成のキー酵素である顆粒結合型澱粉合成酵素Ⅰ型の働きを欠く。一方、HAは、アミロペクチンの合成に関与する酵素の一つである澱粉合成酵素Ⅱa型の働きを完全に欠き、短い側鎖からなるアミロペクチンの側鎖を持つと同時に通常品種に比べて3割ほど高いアミロース含量を示す。これら2種の変異体の交配により、甘味種コムギ(SW)が開発されている。SWにおいては、未熟種子で高いマルトース含量を示すことは報告されているが、その蓄積の経過や完熟種子の成分に関しての分析はなされていない。本研究では、SWの開花から完熟までの種子における糖含量の変化、及びその全粒粉に関する澱粉特性、成分に関する特徴を調査し、今後の加工利用に関する情報として提供する。
成果の内容・特徴
  1. 甘味種コムギの糖濃度(フルクトース+マルトース+グルコース+スクロース)は、開花後20日(20DPA)頃から高まり、25-30DPAで最高値に達し、その後低下し40DPA(完熟)では、通常品種の3倍程度である(図1)。
  2. SWにおいては、灰分、タンパク質、脂質含量は通常品種や両親系統より高いが、澱粉含量はそれらに比べて著しく低く、その減少が千粒重に反映している(表1)。またプロリン、アスパラギン、グルタミンなどの遊離アミノ酸含量が高い傾向を示す。
  3. 完熟種子を用いた成分比較では、マルトース、スクロース等の糖含量が高く、フルクタンを中心とする食物繊維含量が高い(表1)。
  4. 示差走査熱量計(DSC)による澱粉熱的特性は、通常品種やモチコムギに比べて各項目とも低い値を示し、高アミロースコムギと似た傾向を示す(表2)。
  5. 全粒粉を用いたRVA解析においては、SWにおいては温度上昇による糊化に伴う粘性変化が全く確認されず、また冷却によるゲルの粘度上昇も見られない。
  6. 通常品種(内麦)とSW全粒粉を配合して試作した食パンを比較すると、SW配合増加に伴い、食パン体積は減少し、また糖含量が高いため、表面の焼き色は濃くなる傾向にある。一方、5%の配合によりほのかに甘みが感じられ、独特の香ばしい風味や口溶けの良さが確認される。
  7. 上記SW全粒粉配合では、配合が増えるに従い、単位時間当たりの発生ガス量が増加し、それがより持続する(図2)。この結果は、SWを配合した場合にパン酵母が長時間に渡って活発に醗酵していることを示しており、SWに含まれる糖が酵母の活発な醗酵を促した結果であると考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. SWは完熟時に皺粒になり、製粉が困難なことより全粒粉での利用が望ましい。
  2. 食物繊維を多く含み、プレバイオティクスとしての機能性が報告されているフルクタン含量が高いことから全粒粉は健康志向を考えた小麦粉製品への利用可能性が考えられる。
  3. 本データは温室栽培サンプルを供試したものであり、屋外栽培においては、収穫期の環境条件で多少の変動の可能性がある。
具体的データ
図1
図2
表1
表2
予算区分交付金
研究期間2008~2011
研究担当者齊藤美香、新畑智也(日本製粉)、中村俊樹、石川吾郎、瀧屋俊幸(日本製粉)、伊藤裕之
発表論文1)Shimbata et al. (2011) J. Agri. Food Chem. 59:4794-4800
発行年度2011
オリジナルURLhttp://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/tarc/2011/112d0_10_14.html
収録データベース研究成果情報

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