実用化に一歩近づいたスギからのバイオエタノール製造技術

実用化に一歩近づいたスギからのバイオエタノール製造技術

タイトル実用化に一歩近づいたスギからのバイオエタノール製造技術
要約人工林の主要樹種であるスギを原料としたバイオエタノール製造技術の開発を目的とした試験プラントでの実証試験が終了し、収量、コスト、エネルギーなどを試算してビジネスモデルに近づけました。
担当機関(独)森林総合研究所 きのこ・微生物研究領域
(独)森林総合研究所 バイオマス化学研究領域
区分(部会名)森林
背景・ねらい北秋田市に木質バイオエタノール製造試験プラントを建設し、5年間の実証試験を行いました。この結果、スギ1トンから約220リットルの収率でエタノールが製造できることを実証しました。また、低コストで糖化用の酵素を生産する技術を開発したことにより、エタノール製造のランニングコストを98円/ℓまで引き下げることができました。原料使用量250t/日の工場を想定し、エネルギー収支を試算した結果、副産物として得られる黒液(リグニン)でバイオエタノール製造に係わる全てのエネルギーを賄うことができることが分かりました。さらに、黒液の約25%が余剰となることから、これをマテリアル原料として利用できることが分かりました。
成果の内容・特徴

背景・目的

我が国では利用されず山に残されている林地残材が毎年約800万t(400万炭素t)も発生していると試算されていますが、この未利用森林資源はエネルギーにも化学原料にも変換できる持続的な再生可能資源です。これを活用する技術を開発することによって停滞する山村経済の活性化が期待されています。

木質バイオエタノール製造試験プラント

平成20年、北秋田市にパルプ製造技術にヒントを得て森林総研が開発したスギの前処理法を応用した、糖化酵素の生産からエタノール生産まで一貫生産できる試験プラントを建設しました(写真1)。ここでは収率の向上、低コスト化、生産効率向上を目標に5年間の実証試験を行いました。

低コスト化には酵素生産がカギ

バイオエタノールの実用化にとって最大の問題はコストが高いことです。木質成分であるセルロースの糖化のための酵素分解は反応性が低く、多くの酵素を必要としますが、市販酵素では費用がかかり過ぎるため、実用化のために低コストの酵素生産技術を開発しました。また、酵素生産菌のエサにスギを前処理して作ったパルプを使うとスギパルプの糖化に適した酵素が得られることがわかり、試験プラント内で酵素生産の実証試験を行いました(写真2)。その結果、市販酵素を購入する場合と比較して約8割もコストを削減できることが確認されました(図1)。

実用化へのシナリオとコスト分析

実証試験では、木材からスギパルプを取り出す前処理の収率が44%、スギパルプからグルコースなどの単糖に変換する酵素糖化収率は95%、糖からエタノールに変換する発酵収率は90%となり、1トンのスギチップから216リットルのエタノールが生産できることが実証されました。さらに、前処理のパルプ化を既存パルプ工場の余剰のパルプ生産能力でカバーするシナリオで、1日に250tのスギチップを処理する場合のコストを試算しました。その結果、原材料費などのランニングコストは98円/ℓ、トータルコストで約260円/ℓとなりました(図2)。

製造エネルギーは完全自給、余った黒液は有価物へ

スギの前処理時に発生する黒液はバイオエタノールを製造するためにボイラーで燃やされ、熱と電気に利用されます。そこで、発生エネルギーと消費エネルギーを比較してみました(図3)。その結果、エネルギーは完全に自給可能であることが分かり、スギの成分としては44%がエタノール、42%が製造エネルギーとなり、残りの14%が黒液として余ると試算されました(図3)。現在、この余剰黒液からリグニンを取り出し、付加価値の高い有価物へ変換するための研究を進めています。この全体利用のシステムによって木質バイオエタノールの収支を大きく改善できることを示しました。

本研究は、林野庁森林整備効率化支援機械開発事業「木質バイオマスの大規模利用技術の開発」による成果です。
具体的データ
写真1
写真2
図1
図2
図3
図4
研究担当者野尻 昌信(きのこ・微生物研究領域)、渋谷 源(きのこ・微生物研究領域)、真柄 謙吾(バイオマス化学研究領域)
発行年度2013
オリジナルURLhttp://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2013/documents/p26-27.pdf
収録データベース研究成果情報

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