カビでスギ花粉の飛散を絶つ防止剤の開発

カビでスギ花粉の飛散を絶つ防止剤の開発

タイトルカビでスギ花粉の飛散を絶つ防止剤の開発
要約花粉症をもたらすスギ花粉の飛散を防止するため、雄花を枯死させるスギ黒点病菌を添加した散布液を新たに開発しました。10月~12月に散布することにより80%以上のスギ雄花を枯死させることに成功しました。
担当機関(独)森林総合研究所 企画部研究評価科
(独)森林総合研究所 森林微生物研究領域
(独)森林総合研究所 東北支所 生物被害研究グループ
(独)森林総合研究所 九州支所 森林微生物管理研究グループ
区分(部会名)森林
背景・ねらい現在、スギ花粉症には早急な対策が求められています。本研究では、自然界に生育するスギ雄花だけを枯死させるカビの一種を利用し、培養したカビの活性が落ちないように処理した散布液を開発しました。この散布液を10月~12月にかけて、成熟した雄花に1回だけスプレーしたところ、わずか2~3ヶ月の間に80%以上の雄花を枯死させることができました。スギ花粉の飛散防止に、即効性があり環境負荷が少ない技術が開発されました。
成果の内容・特徴

はじめに

2004年春、福島県西会津町のスギ林において、花粉がまったく飛散しない雄花が発見されました。調べてみると、この雄花はスギの雄花だけに寄生するスギ黒点病菌(Sydowia japonica)というカビに感染していることが分かりました。私たちは、この自然界に普通に生育するカビを利用してスギの雄花を枯死させ、花粉の飛散を抑える方法の開発に着手しました。カビという微生物を利用して花粉の飛散を防止しようとする技術開発は、世界で初めての試みです。

雄花内への侵入機構

カビに感染すると、なぜ雄花が枯死し花粉が飛ばなくなるか。それを明らかにするために、カビの分生子(胞子体)を雄花に接種しました。分生子は雄花の表面で菌糸を伸ばしながら雄花の外側を被っている鱗片の間から侵入します。そして、花粉が収められている花粉嚢(のう)という器官に入り込み、花粉(花粉粒)に感染します(図1)。この後、カビは花粉を栄養源として繁殖し、雄花の細胞を破壊してしまうため、雄花は開花できずに死んでしまい、花粉が飛散しなくなることが分かりました。

散布液の開発

このカビの分生子を使った散布液を作るため、まず1リットルあたり80億個という大量の分生子(図2)を作ることができる栄養培地を開発しました。次に、分生子を水に入れて散布すると、短時間で乾燥するため、分生子は雄花に侵入する前に死んでしまいます。そこで、分生子に大豆油と大豆レシチンを混ぜて乳化させた散布液を開発しました。この乳化した散布液を実験林内のスギ林に散布したところ、分生子は約40日間の乾燥に耐え(図3)、雄花に付着した後も菌糸を伸ばす能力を持ち、高い感染力を維持することが分かりました。

薬効試験

スギ雄花は8月下旬からできはじめ、10月に小胞子期という成熟した花粉を持つ雄花になります。植栽された約30年生のスギ雄花に対し、9月から翌年2月まで、雄花に対して乳化した散布液を散布しました。その結果、10月~12月に散布すると、雄花の枯死率が非常に高くなりました(表1)。このことから、雄花の成熟に合わせて、散布液を1回散布すれば80%以上の雄花を枯死させることができることが分かり(図4)、カビを利用したスギ花粉の飛散防止技術の開発に成功しました。
このカビは農薬登録をしていないので、すぐに使えるようにはなりませんが、今後、実用化に向けて安全性等を検討していきます。

この研究は、農林水産技術会議 新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業課題「菌類を利用したスギ及びヒノキ花粉飛散抑止技術の開発」による成果です。また、福島県林業研究センター、静岡県農林技術研究所森林・林業研究センター及び石川県農林総合研究センター林業試験場との共同研究です。
具体的データ
図1
図2
図3
表1
図4
研究担当者窪野 高徳(企画部研究評価科)、秋庭 満輝(森林微生物研究領域)、升屋 勇人(森林微生物研究領域)、市原 優(東北支所 生物被害研究グループ)、高畑 義啓(九州支所 森林微生物管理研究グループ)
発行年度2013
オリジナルURLhttp://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2013/documents/p46-47.pdf
収録データベース研究成果情報

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