森林用ドロップネットで効率よくシカを捕獲する

森林用ドロップネットで効率よくシカを捕獲する

タイトル森林用ドロップネットで効率よくシカを捕獲する
要約シカの被害地において、銃器を用いずにピンポイントでシカを捕獲する方法として、持ち運びも設置も簡単で捕獲効率のよいワナを開発しました。
担当機関(独)森林総合研究所 関西支所
(独)森林総合研究所 野生動物研究領域
区分(部会名)森林
背景・ねらい増えすぎたシカが各地で深刻な森林被害をもたらしています。これまでシカ捕獲はハンターに依頼するしかありませんでしたが、被害現場で林家等が直接シカを捕獲できるよう、森林の中で使いやすく、持ち運びも設置も簡単で安全に使用でき、捕獲効率のよいワナを開発しました。本体の資材費は約9万円、重量は約20kg、4人いれば制作日数は1日、設置も1日でできます。ワナ1基で、1日あたりの捕獲頭数は0.60頭となりました。これまで報告のある箱ワナなどの捕獲効率(1日あたり約0.40頭)と比べて高いことがわかりました。ワナを設置したままで他の作業をしたい、シカ以外の危険な動物を間違って捕獲したくないなどの場面で、安全・確実・効率の良い捕獲ができます。
成果の内容・特徴

現場でシカを捕獲する

シカの数が増え分布が広がるにつれて、森林・林業に深刻な被害が起きるようになってきました。多くの自治体でシカ管理計画を作っていますが、被害はいっこうに減りません。そのため当研究所をはじめ、数を減らすためにさまざまな新しい捕獲方法を試みています。しかし、銃器を用いる方法ではハンターの人材不足が問題です。そこで、被害がおきている森林・林業の現場で、特殊な資格や技能を要せず、誰にでも繰り返し捕獲できる技術を開発しました。

森林用ドロップネットの開発

ドロップネットとは、空中に網を張り、捕獲したい動物が網の下に来た時に網を落として捕獲するワナです(写真1)。板や網で作られた囲いの中へ、狭い入口から誘導しなければならない囲いワナや箱ワナに比べて、動物に警戒されにくいと考えられています。休耕地や牧草地など平坦で開けた場所では、1辺が20メートルという大きな網を使ったドロップネットが使われていますが、設置場所や資材の運搬を考えると、森林の中では使えません。
このため、持ち運びも設置も簡便で安価なワナを設計しました。まず、立木を支柱にすることで、重い金属製の支柱を設置する手間を省き、網(1辺10メートル)を設置する場所を柔軟に選べるようにしました。自然の立木を利用することは、動物がワナを警戒しなくなるという効果もあります。また、ワナが作動した後に網が巾着状に絞られるようにし、捕獲されたシカを包み込んで逃げないようにするなどの工夫を加えました。さらに、なるべくホームセンターなどで入手できる資材を用いたところ、本体の資材費は約9万円、資材重量は約20kgとなり、安価で軽量なワナとなりました。4人いれば、ワナは1日でつくることができ、設置も1日ですみます。ワナ1基を稼働させた場合の1日あたりの捕獲数は0.60頭、これまで報告されている箱ワナなどの捕獲効率(おおむね0.40頭)より高くなりました。

使用方法

シカを頻繁に見る、新しい足跡や糞がたくさんある場所を捕獲の候補地に選びます。地面に障害物がなく開けた場所を使えば、資材の運搬、ワナの設置、シカをおびき寄せるための餌やり、捕獲したシカの運び出しなど、さまざまな作業が楽になります。網を車高より高く設置すれば、車が網の下を通過できるため、捕獲の準備だけでなく、周辺で別の作業をしたい時にも邪魔になりません。
ドロップネットでシカを捕獲する時には、ウェブカメラを使ってワナを監視しています。これは手間がかかるように思われますが、クマやイノシシのような危険な動物や、天然記念物のカモシカを間違って捕獲しないため、さらにシカが網下の中央にいる瞬間に網を落として確実に捕獲する(写真1)ために、大事なことです。長時間監視を続けるのは大変ですので、前もって餌を置いてシカをワナの下におびき寄せておきます。その様子を別の自動撮影カメラで記録しておき、撮影された写真から、毎日のように、ほぼ同じ時刻に、シカが餌を食べにくるようになるのを確認できたら、捕獲のチャンスなので、監視体制をとり、捕獲します。
この方法によって、山林所有者など銃器を持たない人でも直接シカを捕獲することができるようになりました。なお、シカの捕獲に際しては関連法規を守る必要があります。

本研究は、農林水産省実用技術開発事業「林業被害軽減のためのニホンジカ個体数管理技術の開発」および環境省公害防止等試験研究費「ニホンジカが南アルプス国立公園の自然植生に及ぼす影響とその対策に関する研究」による成果です。
具体的データ
写真1
写真2
研究担当者高橋 裕史(関西支所)、井上 厳夫(京都府森林保全課)、芝原 淳(京都府農林水産技術センター)、野崎 愛(京都府農林水産技術センター)、境 米造(京都府農林水産技術センター)、西村 義一(京都府猟友会)、小泉 透(野生動物研究領域)
発行年度2013
オリジナルURLhttp://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2013/documents/p48-49.pdf
収録データベース研究成果情報

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