クロアワビのXenohaliotis californiensis感染症(国内初事例)

クロアワビのXenohaliotis californiensis感染症(国内初事例)

タイトルクロアワビのXenohaliotis californiensis感染症(国内初事例)
要約種苗生産中のクロアワビの累積死亡率が5ヶ月間で33%に達した。5個体の病貝の病理組織検査の結果、3個体の消化管上皮細胞内にXenohaliotis californiensis症原因菌に特徴的な好塩基性の細菌塊が観察された。別の4個体をPCR法で検査した結果、すべての個体で本菌が検出され、塩基配列は既知の本菌と一致した。国内のアワビから初めて本症原因菌が検出されたので報告する。
担当機関(独)水産総合研究センター 増養殖研究所 魚病診断・研修センター 魚病診断グループ
連絡先0599-66-1830
区分(部会名)水産
専門病理
研究対象あわび
分類普及
背景・ねらいXenohaliotis californiensis感染症はOIE(国際獣疫事務局)のリスト疾病の一つである。本症は1980年代半ばに米国カリフォルニアで野生のBlack Abalone(国内のアワビから初めて本症原因Haliotis cracherodii)の大量死で見つかったのが最初の報告であり、痩せの症状を示すことからWithering syndrome (WS)といわれ、病原体は消化管の上皮細胞に細胞内寄生をするリケッチア様微生物(RLO)の特徴をもつ。
成果の内容・特徴(財)鳥取県栽培漁業協会が飼育していた種苗放流用のクロアワビ(H. discus discus)(殻長14-34mm)について、水面表層に集まり衰弱するような症状を示す病気が2010年9月ごろ(水温22度)(図1)から発生した。2011年1月末までの累積死亡率は約33%に達した(図2)。5検体(#1-5)の病貝をダビッドソン液で固定して、定法に従いパラフィン切片を作製して病理組織学的に観察した。その結果、3検体(#2,3,5)でWSに特徴的な好塩基性の細胞内寄生細菌の塊(<40μm)が消化管の上皮細胞内で観察された(図3)。その他に特筆する病変や病原体は観察されなかった。2検体(#2,5)では、細菌塊が食道後部の上皮細胞のみに観察されたが、1検体(#3)においては、細菌塊が高頻度で観察され、食道後部だけでなく、そ嚢、腸そして消化盲嚢へ繋がる消化管(transport duct)の上皮細胞(図4)にも観察された。組織検査によりWSが疑われたので、別の4検体については、OIE診断マニュアルに従い、食道後部からDNAを抽出してPCR法で本症原因菌(WS-RLO)の核酸を増幅して、塩基配列を決定した。その結果、4検体すべてからWS-RLOの遺伝子が検出され(図5)、塩基配列も既知と一致した。しかし、今回のサンプルからは、WSの特徴である腹足の痩せや消化腺の変性は観察されなかった(図4)。以上より、本事例の主要な死亡原因が本症であるかは明確でないが、本研究によって、国内で国内種のアワビから初めてWS-RLOが検出された。
成果の活用面・留意点既報によるとWS-RLOの主要な感染部位は食道後部の上皮細胞であり、腸などの上皮細胞にも感染する。また、感染適水温は18~25℃とされている。これらの点は本事例と一致する。米国のアワビの例では、WS-RLOは消化腺に感染し、消化腺が変性してアワビが消化・吸収ができなくなり痩せて死に至るとされる。しかし、本事例では、消化腺の変性などは観察されなかった。今後は、実験感染を実施して、国内のアワビ種に対する本症の感受性、死亡率について研究する必要がある。
具体的データ
図1
図2
図3
図4
図5
予算区分農林水産省「水産防疫技術対策委託事業」
研究期間2010~2012
研究担当者桐生郁也、栗田潤、西岡豊弘、嶋原佳子、釜石隆、湯浅啓、三輪理、大迫典久、乙竹充
発表論文Kiryu, I. et al. (2013). Fish Pathol., 48, 35-41.
発行年度2013
オリジナルURLhttp://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=4459&YEAR=2013
収録データベース研究成果情報

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