農業用ダムにおける非灌漑期の安定した小水力発電のための調整型水管理手法

農業用ダムにおける非灌漑期の安定した小水力発電のための調整型水管理手法

タイトル農業用ダムにおける非灌漑期の安定した小水力発電のための調整型水管理手法
要約通年継続した発電を行い発電効率の向上を図るため、後続の灌漑期に向けた貯水量の回復に留意しつつ、非灌漑期に一定の放流量を確保する水管理手法である。従来型水管理による完全従属発電と比べて、設備利用率の向上や建設単価の削減が期待される。
キーワード小水力発電、水管理、農業用ダム、再生可能エネルギー、灌漑用水
担当機関(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 資源循環工学研究領域
連絡先029-838-7614
分類普及成果情報
背景・ねらい農業用ダムにおける小水力発電は、従来灌漑用水の放流に従属して行われ、非灌漑期の放流はほとんど利用されてこなかった。しかし、非灌漑期に発電水利権を得て、さらに水管理(放流パターン)を工夫することができれば、年間を通じた安定的な発電が可能となり、発電コストの低減が期待できる。そこで、農業用ダムを通年エネルギー供給源として活用するために、灌漑・発電の両目的を並立させる「調整型」水管理手法を提案する。
成果の内容・特徴
  1. 水田灌漑用ダム(図1注)を事例として検討する。調整型水管理の基本は、非灌漑期に安定した発電を行うため、常時放流量(ほぼ1年中放流しうる水量)を最大化することである。したがって、非灌漑期における無効放流を抑制し、利水(放流管バルブ)放流量を期間を通じて均等にするため、非灌漑期のダム管理曲線(基準貯水ライン)を従来型の図1(a)から(b)へ、灌漑期の開始時期へ向けて単調増加するように修正する。
  2. 修正された管理曲線に基づき、常時放流量を次のように設定する。常時放流量(m3/s)=[C.P.の合計ダム流入量(90%超過確率値、m3)-C.P.の目標貯水増加量(C.P.初日および最終日の管理曲線水位の貯留量の差、m3)]/[C.P.日数×24×3600]。ここで、C.P.(critical period、一年のうち最も低流量の続く期間の意)を9月11日~3月31日とする。
  3. 次に、利水放流量を図2のアルゴリズムにしたがって決定する。貯水位が最低水位を下回らない限り、上記の常時放流量を極力継続して放流することを基本とする。一方で、ダム流入量の減少する冬期(1月1日~3月31日)のみ、翌灌漑期へ向けたダム貯水量の回復を妨げないよう、ダム貯水位が修正管理曲線を5m以上下回った時に、常時放流量の2分の2(図2の最小放流量)に抑制する(図2注参照)。
  4. 従来型と調整型水管理のダム貯水位(図1)を比較すると、非灌漑期において、発電用水の継続的な放流という新たな目的が加わるため、従来型水管理に比べやや貯水量の回復時期は遅れるが、灌漑期開始日には、従来型の運用実績と同等の水準(90%超過確率値で従来型比100%)まで貯水量が回復すると見込まれる。
  5. kWh当り建設費が最小となるように発電施設の規模を設定した場合、調整型水管理の設備利用率は、従来型比で46%向上する(表1)。これは、非灌漑期に極力連続して常時放流量を保ち、発電を継続したことによるものである(図3)。その結果、調整型では、従来型に比べ、kWh当り建設費が11%削減可能と推察される(表1)。
普及のための参考情報
  1. 普及対象:農村振興局、地方農政局、県庁、土地改良区など
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:水田灌漑用ダム123地区(国営直轄の農業用ダムのうち約6割)。ただし、水文条件や用水需要条件が異なるダム(畑地灌漑ダム等)への適用には、手法の修正が必要である。
  3. その他:本手法は、ここで例示した「kWh当り建設費最小化」以外の目的(例えば年間発電量の最大化や売電収益の最大化)に対する評価にも活用可能である。
具体的データ
表1
図1
図2
図3
予算区分交付金
研究期間2011~2013
研究担当者上田達己、後藤眞宏、浪平篤、廣瀬裕一
発表論文上田ら(2014)農業農村工学会誌、82(4):293-296
発行年度2013
オリジナルURLhttp://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2013/13_073.html
収録データベース研究成果情報

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