モモノゴマダラノメイガが発する超音波はメスの交尾とオスの飛翔を制御する

モモノゴマダラノメイガが発する超音波はメスの交尾とオスの飛翔を制御する

タイトルモモノゴマダラノメイガが発する超音波はメスの交尾とオスの飛翔を制御する
要約モモノゴマダラノメイガのオス成虫は交尾直前に長短2種類の超音波パルスを発し、長いパルスはメス成虫の交尾受入れ行動を引き起こす。一方、短いパルスはキクガシラコウモリが捕食時に発するパルスと類似しており、他のオスの飛翔行動を中止させる。
キーワードチョウ目害虫、モモノゴマダラノメイガ、超音波、行動制御、コウモリ
担当機関(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 品種育成・病害虫研究領域
連絡先029-838-6453
分類研究成果情報
背景・ねらい多くのチョウ目害虫(ガ類)は耳(鼓膜器官)を持ち、天敵であるコウモリ類の捕食から逃れるため、超音波を検出すると不動化や忌避を示す。しかし、コウモリ類が捕食時に発する超音波は5ms以下の短いパルスもしくは60kHz以上の高い周波数で構成され、ガ類に聞こえにくい。そのため、単純にコウモリ類が捕食時に発する超音波を模した合成音を使い、ガ類の飛来を持続的・効果的に阻害することは困難であると予想される。
一方、ガ類には種内で超音波を使ったコミュニケーションを行う種があり、超音波を発することによりシグナルの受信者を惹きつけるあるいは不動化や忌避を引き起こすことが知られている。このように、コウモリ類に対する反応と同等である不動化や忌避の作用を持つ超音波は、ガ類の行動制御に利用できる可能性がある。そこで、モモノゴマダラノメイガのオス成虫が交尾時に発する超音波の機能を解明し、合成超音波を用いて飛翔を抑止できるか検証する。
成果の内容・特徴
  1. モモノゴマダラノメイガのオス成虫は交尾直前に短いパルスと長いパルスの超音波(周波数40~120kHz、音圧103dB SPL@1cm)を発する(図1)。
  2. 超音波の後半に発せられる長いパルスは、交尾を受入れるための特異的な姿勢である、翅を背中側に立て腹部末端を下に曲げる行動をメス成虫に引き起こす(図2)。短いパルスはこれを引き起こさない。
  3. 超音波の前半に発せられる短いパルスの長さは22.27~34.64ms(95%分位点、N=120パルス)であり、食虫性のキクガシラコウモリが捕食時に発するパルス(17.31~47.34ms、N=260パルス)と長さが重複し(図3a)、パルス間の間隔も重複する(データ略)。
  4. オスが発する短いパルスの合成音を飛翔中のオス成虫に2秒間提示すると、オス成虫は高い割合で飛翔を中止する(図3)。一方、長いパルスによる飛翔中止率は低い。
成果の活用面・留意点
  1. ガ類の行動を超音波で制御する際は、ガ類に聞こえやすい周波数(20~50kHz)を適用する。
  2. 一般に、ガ類に聞こえやすいパルスの長さは、20ms以上である。モモノゴマダラノメイガのオス成虫が発する短いパルスの長さは30ms前後であり、ガ類の飛翔を抑制する効果が高い。パルス長が30ms前後のキクガシラコウモリの超音波を50kHzの単一周波数で合成した場合も、ガ類の飛翔を高く抑制する。他方、5ms以下のパルスを発する大多数のコウモリ類の超音波は、ガ類の行動制御に最適ではなく、また、パルス長が100msを越えた場合も抑制効果は著しく低下する。
  3. 耳を持つヤガ科、ドクガ科、シャクガ科、メイガ科等、他のガ類に対しても、パルス長がおよそ30msの超音波による飛翔抑制の効果が期待される。
具体的データ
図1
図2
図3
予算区分交付金
予算区分競争的資金(科研費)
予算区分その他外部資金(その他)
研究期間2013~2014
研究担当者中野亮、井原史雄、三代浩二、外山晶敏、土`田聡
発表論文1)Nakano R. et al. (2014) Proc. Roy. Soc. B 281(1789):20140840
2)Nakano R. et al. (2015) J. Comp. Physiol. A 201(1):111-121
3)中野(2015)超音波テクノ、27(1):1-4
特許出願(公開)中野「チョウ目害虫の飛来を合成超音波で抑止する方法」 特開2014-143997 (2014年8月14日)
発行年度2014
オリジナルURLhttp://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/fruit/2014/fruit14_s18.html
収録データベース研究成果情報

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