スギ雄花形成に関わる遺伝子を特定し花粉症対策に活かす

スギ雄花形成に関わる遺伝子を特定し花粉症対策に活かす

タイトルスギ雄花形成に関わる遺伝子を特定し花粉症対策に活かす
要約花粉症対策品種の開発に向けて、雄花形成から花粉飛散までの組織観察の結果をもとにスギ雄花の発達ステージを決定し、各ステージで働く遺伝子を明らかにしました。
担当機関(国)森林総合研究所 林木育種センター
(国)森林総合研究所 九州育種場
九州大学
区分(部会名)森林
要旨社会問題化しているスギ花粉症への取り組みとして、花粉の少ないスギや無花粉スギなどの花粉症対策品種の開発が求められています。花粉症対策に貢献する優れた品種を効率的に作るためには、花粉を作り出す雄花の発達過程を詳しく理解することが重要になります。今回私たちは、スギの雄花ができ始める8月から花粉が飛散する3月まで、雄花の切片を観察し、その形態的な特徴からスギ雄花の発達段階を10のステージにわけ、各ステージで働く遺伝子を明らかにしました。この成果は、花粉形成に関連した遺伝子に着目した新たな花粉症対策品種の早期選抜技術の開発につながります。
成果の内容・特徴研究の背景
社会問題化しているスギ花粉症への取り組みとして、花粉の少ないスギやまったく花粉を出さないスギなどの花粉症対策品種の開発が進められています。スギは木材生産を目的に植栽される林業樹種であるために、花粉の量だけでなく、より早く大きくなる特性や、より良質な木材を生産するための特性を持たせることも考慮して品種の開発を進めることが重要になります。成長や材質に優れた花粉症対策品種を開発するにあたって、雄花や花粉が少ない個体を「遺伝子」に着目して選ぶことができれば、これまで15年以上かかっていた花粉の少ないスギ品種などの開発期間を大幅に短縮できる可能性があります。そこで今回、新たな品種を早期に選抜する技術の開発につながる基盤情報の整備を目的に、スギの雄花の発達過程で働く遺伝子について情報の集積を行いました。

スギ雄花の発達ステージの決定
スギの雄花が形成されてから花粉が飛散するまでの間に、スギの雄花や花粉はどのように発達するのでしょうか?その過程を明らかにするため、スギの雄花が形成された8月から花粉の飛散が確認された3月までの8ヶ月間にわたり、定期的に雄花をサンプリングし、切片を作製して組織観察を行い、その形態的な特徴からスギの雄花の発達段階を10のステージに区分しました(図1)。

各発達ステージで発現する遺伝子の解析
スギの雄花の発達に伴い、どのような遺伝子が働いているかを明らかにすることは、花粉症対策品種の開発を行う上で、研究のターゲットとする遺伝子を選定する際の重要な情報となります。今回、DNAマイクロアレイ解析と呼ばれる技術を使って約2万種類の遺伝子の各ステージでの発現量を解析した結果、そのうち約8千種類の遺伝子がステージ間で発現量が異なることが分かりました(図2)。また、これら約8千種類の発現量の変化から10段階に区分したステージは、4区分にまとめられることがわかりました(図3)。
今回決定したスギの雄花の発達ステージと各ステージで発現する遺伝子の情報を基に、各遺伝子が雄花の発達や花粉形成に果たす役割を明らかにしていきたいと考えています。そして、それら雄花の発達や花粉形成に重要な働きをする遺伝子を指標にした花粉の生産性の評価手法の開発を目指し、成長等の林業特性が優れかつ花粉症対策にも高い効果を発揮する品種の早期開発へとつなげていきます。

本研究は、農林水産省「森林資源を最適利用するための技術開発」、林野庁「無花粉スギと精英樹の人工交配による新品種開発とその早期判定技術の開発」、JSPS科研費(JP26850103)「スギ雄性不稔原因遺伝子の単離-多様な無花粉スギリソース整備に向けて-」 による成果です。

詳 し く は、Tsubomura, M. et al. (2016) Tree Physiology doi:10.1093/treephys/tpw001 をご覧ください。

DNAマイクロアレイ解析
数万種類の遺伝子の部分配列(DNA 断片)をガラス等の基板上に配置したもの(DNAマイクロアレイ)を使って、各細胞や組織で発現している遺伝子の種類を網羅的に解析する技術のこと。
具体的データ
図1
図2
図3
研究担当者坪村 美代子(林木育種センター)、栗田 学(九州育種場)、渡辺 敦史(九州大学)
発行年度2016
オリジナルURLhttps://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2016/documents/p64-65.pdf
収録データベース研究成果情報

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