気候変動によりマツ材線虫病の危険域は世界的に拡大する

気候変動によりマツ材線虫病の危険域は世界的に拡大する

タイトル気候変動によりマツ材線虫病の危険域は世界的に拡大する
要約現在、東アジアと南ヨーロッパで深刻な被害をもたらしているマツ材線虫病の被害域は、将来の気候変動により、東ヨーロッパ、中央アジア、極東ロシアにまで拡大する可能性があることを明らかにしました。
担当機関(国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 国際連携・気候変動研究拠点
(国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 東北支所
(国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 関西支所
長野県環境保全研究所 
東京農業大学
東京大学
区分(部会名)森林
背景・ねらいマツ材線虫病(マツ枯れ)は、東アジアや南ヨーロッパで深刻な被害をもたらしており、気候変動による被害域の拡大が懸念されています。そこで、気候変動シナリオ下でのマツ枯れの発生危険域を世界で初めて地球規模で予測しました。その結果、将来の気温上昇量が大きいシナリオ下では、マツ枯れ発生危険域は、現在、世界のマツ21種が天然分布する地域の5割にまで拡大し、そのうちの約4割の地域はマツの分布に適さない気候条件になってしまう可能性があることがわかりました。本研究の結果は、マツ枯れの拡大阻止に取り組む世界の国々にとって重要な基礎情報となり、気候変動にともなう被害拡大の予防に役立ちます。
成果の内容・特徴世界に広がるマツ枯れ被害
 マツ材線虫病(マツ枯れ)は、線虫であるマツノザイセンチュウがマツノマダラカミキリおよびその近縁種によって媒介されることで発生する、マツ類樹木の伝染性病害です。日本では、20世紀の初頭に北米からマツノザイセンチュウが侵入して以来、マツ林に深刻な被害をもたらしてきました。現在は、日本・韓国・中国といった東アジア諸国ばかりでなく、ポルトガルやスペインなどの南ヨーロッパ諸国でも深刻な被害をもたらしています。
 マツ枯れは一度発生すると、短期間のうちに壊滅的な被害を引き起こすこともあります(図1)。そのため、マツ枯れ被害が今後も地球規模で拡大し続けると、各国の森林生態系の機能やサービス、林業・林産業に甚大な影響をもたらすのではないかと危惧されています。したがって、マツ枯れの発生危険域を早めに特定することが、マツ枯れを防除するために重要です。
気候変動によって被害域は拡大するか?
 マツ枯れの発生は気温と密接な関係があることから、将来の気候変動によって被害域が北方へ拡大することが懸念されています。また、現在はマツ林が分布しているものの、将来の気候変動によって気温や降水量などの気候条件がマツの分布に適さなくなる地域では、マツの活性が低下することによってマツ枯れに対する抵抗性が弱まる危険性があります。
 そこで本研究では、マツ枯れに対する抵抗性が低い世界のマツ21種(感受性マツ)の天然分布域を対象に、現在および将来の気候変動シナリオ下でマツ枯れが発生する危険域を、各月の平均気温の積算値から推定して地図化しました。さらに、21種のマツの分布と気温や降水量といった気候条件との関係を統計モデルによって定量化し、将来はマツの分布に適さなくなる地域を推定して地図化しました。
 これら2つの異なる地図を重ね合わせた結果、現在の気候条件下では、東アジアや南ヨーロッパのマツ分布域がマツ枯れ被害の危険域として判定され(図2)、実際にこれらの危険域の多くで、すでにマツ枯れ被害が見られました。また、将来の気候変動にともなって、危険域は東ヨーロッパや中央アジア、極東ロシアにまで拡大すると予測されました(図3)。気温上昇量が特に大きい気候シナリオ下では、危険域は感受性マツの天然分布域の5割にまで拡大し、しかもそのうちの4割はマツの分布に適さない気候条件になってしまう可能性があることがわかりました。
国際的なマツ枯れ防除の必要性
 このように、気候変動が今後も進行した場合には、現在よりはるかに北方の国や地域でもマツ枯れ対策が必要になります。本研究の結果は、マツ枯れ拡大の阻止に取り組んでいる国々にとって重要な基礎情報となるほか、今後の気候変動にともなって被害が拡大する可能性のある国や地域におけるマツ枯れ防除策の立案に役立ちます。
予算区分(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(S-14)
研究担当者平田 晶子(国際連携・気候変動研究拠点)、大橋 春香(国際連携・気候変動研究拠点)、松井 哲哉(国際連携・気候変動研究拠点)、中村 克典(東北支所 )、小南 裕志(関西支所)、中尾 勝洋(関西支所)、高野 宏平(長野県環境保全研究所)、田中 信行(東京農業大学)、竹内 渉(東京大学)
発表論文Hirata, A. et al. (2017) Potential distributions of pine wilt disease under future climate change scenarios. PLoS ONE, 12(8), e0182837. https://- doi.org/10.1371/journal.pone.0182837
発行年度2018
オリジナルURLhttps://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2018/documents/p14-15.pdf
収録データベース研究成果情報

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