過熱水蒸気を利用した環境保全型穀物種子消毒技術

過熱水蒸気を利用した環境保全型穀物種子消毒技術

タイトル過熱水蒸気を利用した環境保全型穀物種子消毒技術
要約過熱水蒸気を利用して穀物種子を高温短時間で熱消毒する技術。熱消毒から冷却・乾燥までを連続的に行えるため、低コストかつ高能率な作業体系を実現できる。水稲種子への病害防除効果は温湯消毒(60°C、10分)と同等以上であり、麦類種子へも利用できる。
キーワード蒸気、種子消毒、水稲、麦、低コスト
担当機関(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 農業技術革新工学研究センター 土地利用型システム研究領域 収穫・乾燥調製システムユニット
連絡先048-654-7000
分類研究成果情報
背景・ねらい農薬を用いない環境保全型の水稲種子消毒技術として、熱消毒の一種である温湯消毒が普及しているが、多量の種子処理と消毒済み種子の流通を行う施設では、温湯槽への給湯作業、脱水・乾燥作業に要する時間や労力、コスト面に対して一層の改善が求められている。また温湯消毒は残効が無いため、消毒後の種子管理や育苗方法などに起因する二次感染リスクが高い点、ばか苗病や細菌病などの一部の種子伝染性病害に対する消毒効果が慣行の化学農薬体系に劣る点が指摘されている。さらに、水稲以外の穀物に対して温湯消毒は実用的ではない。
そこで本研究では、過熱水蒸気を利用した低コストで高能率な穀物種子消毒技術(蒸気消毒)を開発し、併せて、その利用体系を提案する。
成果の内容・特徴
  1. 蒸気消毒に使用する熱媒体は、過熱水蒸気と熱風を混ぜて湿度を制御した高温高湿度空気である。高温高湿度空気は穀物種子の表面で凝縮し、種子表面を高温(約90°C、熱媒体の湿度で決定)で湿熱処理する。加熱時間は5~10秒であり、熱が種子内部へ伝わる間に種子内部をも殺菌する。加熱中に穀物種子へ凝縮した水分は僅かであるため、加熱後に常温通風を行うことで冷却・乾燥までの連続処理ができる(図1)。最適な処理条件(種子の発芽率を維持できる最大の加熱条件)は穀物種子の種類で異なるが、いずれも加熱後の種子温度で決定できる(図2)。加熱後の種子温度は気流の湿度や加熱時間などの調整により、概ね±1°Cの精度で機械的に制御できる。
  2. 水稲種子では、加熱後の種子温度を75°Cに設定することで、温湯消毒(60°C、10分)と同等以上の種子消毒効果を持つ(表1)。消毒後の種子は、紙袋に入れて冷蔵室内で保存すれば、発芽低下や病害再感染もなく、200日程度保存できる。細菌病への追加防除や育苗中の二次感染対策には、温湯消毒と同様、食酢や生物農薬が利用できる。これらにより、蒸気消毒を基軸とした水稲育苗期の無農薬防除体系を構築できる。
  3. 小麦種子では、加熱後の種子温度を68°Cに設定することで、苗立率を70%以上維持したまま、なまぐさ黒穂病に対して実用的な防除効果を持つ(表2)。なまぐさ黒穂病は種子調製ラインでの交差汚染が主要な感染形態となるため、蒸気消毒を種子調製ライン上に設け、種子へ付着した菌を殺菌する機械体系が有望である。
  4. 100kg/hの処理能力を持つ試作機を用いて生産現場で実証試験を行った際の消毒コストは、水道代、電気代、灯油代の合計で水稲種子1kgあたり3.2円程度である。
成果の活用面・留意点
  1. 最適な処理条件は、蒸気消毒の装置構造によっても変わる可能性があるため、上記の種子温度を目安に機械毎に最適な条件を再確認する必要がある。
  2. 上記以外の穀物種子、野菜種子、青果物へも利用できる可能性がある。
予算区分交付金
予算区分交付金(緊プロ)
研究期間2008~2017
研究担当者野田崇啓、日髙靖之、土師健、嶋津光辰、荒井圭介、三室元気、中岡清典((株)サタケ)、中村透((株)山本製作所)、伊與田浩志(大阪市立大)、有江力(東京農工大)、東岱孝司(北海道十勝農試)、本田浩央(山形農総セ)、宮野法近(古川農試)、島田峻(茨城農研)、駒場麻有佳(栃木農試)、酒井和彦(埼玉農技セ)、守川俊幸(富山農総セ)、藪哲男(石川農試)、磯田淳(島根農技セ)、星野滋(広島農技セ)、石井貴明(福岡農試)
発表論文1)野田ら(2014)農業食料工学会誌、76(6):553-563
2)野田ら(2015)農業食料工学会誌、77(5):371-383
3)野田ら(2016)農業食料工学会誌、78(1):95-105
4)野田ら「種子消毒装置」特開2016-93122(2016年5月26日)
発行年度2017
オリジナルURLhttp://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/iam/2017/iam17_s01.html
収録データベース研究成果情報

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