コメの収量および品質低下リスクの将来変化に関するデータセットの公開

コメの収量および品質低下リスクの将来変化に関するデータセットの公開

タイトルコメの収量および品質低下リスクの将来変化に関するデータセットの公開
要約今世紀半ばにおけるわが国のコメ収量変動と品質低下リスク(ヒートドース値)を、約10kmのメッシュで推定し、データセット化した。本データセットは、政府および都道府県の気候変動適応計画策定で活用される。
キーワードコメ、収量・品質、ヒートドース値、自治体適応策
担当機関(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境変動研究センター 気象変動対応研究領域 影響予測ユニット
連絡先029-838-8240
分類普及成果情報
背景・ねらい温暖化の進行に伴い、わが国でもコメの減収や外観品質・食味の低下が問題となってきており、その対策が急務とされている。温暖化の影響は地域により異なるため、その地域ごとに信頼性の高い将来影響評価に基づく対策を講じる必要がある。そこで、主に政府・都道府県における適応策の策定に役立てるため、2000年頃および今世紀半ばに予想される気候条件下でのコメの収量変動および品質低下に関する情報を、メッシュ値として提供する。ヒートドース値とは、出穂後20日間(登熟期前半)について、日平均気温が26°Cを超過した値を積算した暑熱指数であり、この値がおよそ20(°C・日)を越えると、品質低下のリスクが増すとされる。
成果の内容・特徴
  1. 基準期間(1981~2000年)および近未来期間(2031~2050年)におけるコメ収量およびヒートドース値を、国土数値情報第二次メッシュ(約10km×10km)単位のデータセットとして提供する。収量およびヒートドース値の推定に当たっては、イネ生育・収量モデル(H/Hモデル)に18セット(気候モデル6×温室効果ガス排出シナリオ3)の気候シナリオを入力し、各都道府県の代表的な(2003年の栽培面積1位の)品種と作柄表示地帯別の平均的な移植日を用いている。
  2. 本データセットからは、都道府県や作柄表示地帯ごとの適応策の策定に有用な情報が得られる。たとえば、気温上昇が中庸な気候シナリオ(MIROC5モデル/排出シナリオRCP4.5)に基づく推定では、近未来期間の収量は基準期間と比べて、北日本や日本海側地域では増収となるが、関東~近畿の平野部と四国・九州の多くの地域では減収となる(図1)。また、基準期間におけるヒートドース値は多くの地域で10以下であるが(図2a)、近未来期間では、特に関東以西の平野部において40を超すヒートドース値も出現し、高温による品質低下リスクが高まる(図2b)。
  3. 推定された収量やヒートドース値は、用いる気候シナリオ(気候モデルと温室効果ガス排出シナリオ)のほか、気候の年々変動による予測の幅(不確実性)が大きいことに留意する必要がある。図3は、基準期間および近未来期間各20年でのヒートドース値の出現分布の例である。近未来期間では、用いる気候モデルにより、20以上のヒートドース値が出現する年があり、特に温室効果ガス排出の多いRCP8.5シナリオの場合、その値が40近くになる年も多い。このように、不確実性を含んだ情報は、適応策のオプション(既存の栽培管理技術の徹底、移植時期の移動および高温耐性品種への転換)を選択する意思決定にも利用可能である。
  4. 図3のヒートドース値出現分布を全国で見た場合、特に西日本では、基準期間でもその値が頻繁に20を越える地域も見られる。それらの地域では、現時点でも高温年には品質低下リスクが高まることから、既存の高温対策技術を積極的に適用する必要がある。
普及のための参考情報
  1. 普及対象:農林水産省「地域の気候変動適応計画調査・分析事業」等に関係する都道府県の農業部門、農業試験研究・普及指導機関
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国
  3. 利用方法:本データセットは、農業環境情報データカタログサイト(NIAES VIC)の「日本における温暖化時のコメ収量および品質低下リスクデータセット」(https://niaesvic.dc.affrc.go.jp/dataset/gwrice)にて、利用ガイダンスとともに入手可能である。本データセットの数値データは、対象地域ごとに、csv形式ほか複数のファイル形式でダウンロードでき、サイト上でのマップ表示も可能である。また、ダウンロードしたメッシュ毎のデータを、同時に配布するサンプルシートに入力することにより、利用者が図3と同様の図を作成することもできる。
  4. 留意点:本データセットは、気候モデルの計算値に基づいており、特定年の気象状態や気候現象を再現または予測するものではない。基準期間のデータセットは、全体としては観測統計値から得られる平均値や年々変動の分散と対応しているが、たとえば1993年のデータが、実際に起こった冷夏を反映しているとは限らない。近未来期間の各年のデータについても、同様である。
  5. その他:本成果は、2018年2月16日に公表された「気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018」(環境省・農林水産省ほか編)にも掲載されている。
予算区分交付金
予算区分委託プロ(温暖化適応・異常気象対応)
予算区分競争的資金(環境研究総合)
予算区分その他外部資金(気候変動適応研究推進)
研究期間2010~2017
研究担当者石郷岡康史、長谷川利拡、桑形恒男、西森基貴
発表論文1)Ishigooka et al. (2017) J. Agric. Meteorol. 73:156-173
2)Ishigooka et al. (2011) J. Agric. Meteorol. 67:209-224
発行年度2017
オリジナルURLhttp://www.naro.affrc.go.jp/project/results/popular/result100/2017/17_058.html
収録データベース研究成果情報

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