ダイズ重要形質の遺伝解析のための野生ダイズの染色体断片置換系統群

ダイズ重要形質の遺伝解析のための野生ダイズの染色体断片置換系統群

タイトルダイズ重要形質の遺伝解析のための野生ダイズの染色体断片置換系統群
要約栽培ダイズ品種の遺伝的背景を持ち、染色体の一部のみが野生ダイズに置換された>染色体断片置換系統群を開発し、それらの系統を用いて種子重や開花期QTLのゲノム上の座乗領域を明らかにできる。開発した野生ダイズの染色体断片置換系統は重要形質の遺伝解析に利用できる。
キーワード野生ダイズ, 染色体断片置換系統, 重要形質, QTL
担当機関(国研)国際農林水産業研究センター 生物資源・利用領域
区分(部会名)国際農林水産業
分類研究
背景・ねらい野生ダイズ(Glycine soja Sieb. & Zucc.)は栽培ダイズの祖先種であり、東アジアに分布している。野生ダイズのDNAレベルの遺伝的変異は栽培ダイズより多いため、野生ダイズが栽培ダイズの種子品質、収量、ストレス耐性などの重要な農業形質を改良するために有用な遺伝資源であると考えられている。これまでにさまざまなダイズ遺伝資源を解析することにより、近畿地方の野生ダイズ系統「JWS156-1」が高い耐塩性を示すことを報告している。さらに、その耐塩性に関わる遺伝子を同定することによって、DNAマーカーを開発し、耐塩性品種の育種に利用している。しかし、多くの重要な農業形質の遺伝様式は極めて複雑であり、遺伝背景や生育環境によって、それらの形質発現は大きく影響を受けるため、野生ダイズが持っている有用遺伝子を直接評価することは困難である。本研究では、栽培ダイズ「Jackson」の遺伝的背景をもち、染色体の一部のみが野生ダイズ「JWS156-1」に置換された染色体断片置換系統群(CSSLs)を作成し、遺伝背景をそろえた条件でのダイズ重要農業形質の遺伝解析を試みる。これらの系統群を利用することにより、野生ダイズの中に埋もれている有用遺伝子の発掘が加速できると期待される。
成果の内容・特徴
  1. 栽培ダイズ品種「Jackson」と野生ダイズ系統「JWS156-1」を交配したのち、栽培ダイズを反復親として3回連続戻し交配並びに自殖を行い、計120のBC3F5系統を作成する。計235個のDNAマーカーを用いて解析した結果によると、開発した野生ダイズCSSLsは、平均して7%のゲノム領域が野生ダイズに由来し、93%のゲノム領域が栽培ダイズに由来するゲノムをもつ(図1)。
  2. 開発した野生ダイズCSSLsを3年間栽培して百粒重を調査し、QTL(量的形質遺伝子座)解析をした結果は、百粒重に関する計9個のQTLが第8、9、12、13、14、16、17および20染色体に座乗することを示す。そのうち、第12染色体の約1,348 kbの領域に3年連続で検出されたqSW12.1は、効果が大きい安定した新規QTLである(図2)。
  3. ダイズ収量と適応性に関わる開花期QTLを同定するために、開発した野生ダイズCSSLsを2年間圃場で栽培し、QTL解析を行った結果は、開花期と関連する計4個のQTLが第7、12および19染色体に座乗することを示す。そのうち、第12染色体上に座乗qFT12.1は、開花期に関わる新規遺伝子を含む領域であると推定される(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. 開発した野生ダイズCSSLsは、野生ダイズと栽培ダイズの間で差異がある他の重要な農業形質(生育、環境ストレス耐性、病害虫抵抗性など)の遺伝解析への利用が期待される。
  2. 各CSSLsは目標とする野生ダイズ置換領域以外の領域に野生ダイズゲノムやヘテロ接合領域がまだ残っているため、さらに戻し交配と選抜を行う必要がある。
予算区分交付金›不良環境耐性作物開発
研究期間2016~2018
研究担当者許 東河(生物資源・利用領域)、藤田 泰成(生物資源・利用領域)、Liu Dequan(生物資源・利用領域)
発表論文Liu D et al. (2018) Breeding Science, 68(4):442-448 DOI: 10.1270/jsbbs.17127
Liu D et al. (2018) Molecular Breeding, 38:45 DOI: 10.1007/s11032-018-0808-z
発行年度2018
オリジナルURLhttps://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2018_b04
収録データベース研究成果情報

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