日本の民有林における干害被害の長期推移と地域性

日本の民有林における干害被害の長期推移と地域性

タイトル日本の民有林における干害被害の長期推移と地域性
要約統計資料を用いて、日本の民有林で報告された干害被害の長期推移や、林齢別・樹種別・都道府県別での干害被害の動向とその差異を明らかにしました
担当機関(国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 森林防災研究領域
(国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 森林災害・被害研究拠点
区分(部会名)森林
背景・ねらい森林管理や林業経営を適切に行うには、様々な気象害に対するリスクを把握することが重要です。様々な気象害のうち水不足によって樹木が枯れる干害に着目し、民有林における過去36年間の被害動向を調べました。干害のほとんどは幼齢人工林で報告されており、その被害率には長期的な増加傾向も減少傾向も見られないことが分かりました。さらに、樹種別・都道府県別での幼齢人工林の被害率とその差異を明らかにしました。一方、夏から秋にかけて著しく少雨・高温であった年には、壮齢林でもまとまった被害が生じていたことが分かりました。このような林齢・樹種・地域別の詳細な被害動向の情報は、気象害リスク対策に役立てることができます。
成果の内容・特徴気象害リスクの把握
 森林の適切な保全・管理や健全な林業経営を行うためには、様々な気象害の発生状況を把握しリスク管理を行うことが重要です。気象害には風害・雪害・水害・干害など様々な種類があり、それぞれ被害を受けやすい林齢や地域が異なるため、気象害毎に被害動向を把握する必要があります。近年、気候変動に伴う乾燥化による樹木の枯死や衰退の問題が世界的に注目されています。本研究では、全国の民有林を対象とする気象害の統計資料に記録された干害の被害データに基づいて、日本の被害率の長期推移や林齢・樹種・都道府県別での発生状況を調べました。
干害被害の動向
 民有林での干害被害の95.3%は人工林1齢級(1-5年生)が占めています。実損面積は減少傾向が見られますが(図1a)、これは造林面積が減少して幼齢林が減っているためで(図1c)、民有人工林1齢級(1-5年生)の被害率でみると長期的な増加傾向も減少傾向も見られません(図1b)。民有人工林1齢級(1-5年生)被害率を都道府県別にみると、北陸、甲信、近畿、中国地方および香川県で比較的被害率が大きく、北海道、東北、関東、東海、九州地方で小さいこと(図2a)、また、多くの都道府県でスギよりヒノキの被害率の方が大きいこと(図2b)が分かりました。
 個々の年に注目すると、1994年には九州を中心に壮齢林でもまとまった干害被害が報告されていました(図1a)。この年の夏は全国的に著しく高温少雨で、九州以外では9月には降雨が回復しましたが、九州では9月も少雨が続きました。

干害リスク管理にむけて
 干害被害の動向を林齢・樹種・地域別に詳細に把握することによって、その情報を森林管理や林業経営における干害リスク対策に役立てることができます。近年、地球温暖化の影響が懸念されており、日本でも無降雨日が長期化する傾向があるとの指摘があります。こうした気候の変化によって、干害被害の動向も今後変化していく可能性があります。今後は、樹種や林齢、立地などの干害被害への影響について、野外調査や実験などを行い樹木生理学的に解明していくことも重要になります。同時に、干害に限らず各種の気象害情報を継続的に収集・解析していくことも必要です。今回明らかにした被害動向の情報は、今後こうした気象害研究を進めていくための指針として役立ちます。
予算区分実施課題
研究担当者吉藤 奈津子(森林防災研究領域)、玉井 幸治(森林防災研究領域)、鈴木 覚(森林災害・被害研究拠点)
発表論文吉藤奈津子(他)(2019) 統計資料に基づく36年間の日本の民有人工林における干害被害の推移と地域性. 森林総合研究所研究報告, 18(3), 289-299.
発行年度2020
オリジナルURLhttps://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2020/documents/p8-9.pdf
収録データベース研究成果情報

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