統合オミクス解析による ニホンウナギ雌における天然魚と人工養成魚の違いの包括的解明

統合オミクス解析による ニホンウナギ雌における天然魚と人工養成魚の違いの包括的解明

タイトル統合オミクス解析による ニホンウナギ雌における天然魚と人工養成魚の違いの包括的解明
要約ウナギ種苗生産時に、人工養成ウナギ雌に頻発する放卵不全の原因を放卵不全がごく稀にしか起こらない天然魚雌と人工養成魚雌との比較オミクス解析によって推測したところ、人工養成魚養成時に与えていた飼料中のデンプン量が多く、脂質異常症や糖尿病の様な症状を呈していることが分かった。他動物でも、肥満や糖尿病の雌は繁殖に様々な悪影響を及ぼすため、ウナギでも改善が必要と考えられた。
担当機関(国研)水産研究・教育機構 増養殖研究所 ウナギ種苗量産研究センター 量産基盤グループ
連絡先099-472-0730
区分(部会名)水産
専門魚介類繁殖
研究対象魚類
分類研究
背景・ねらいウナギ種苗生産において、雌親魚はシラスウナギをエストラジオール17β添加飼料給餌による雌化処理した人工養成魚を用いているが、誘発産卵時に未熟な卵巣片が総排泄孔に詰まり正常な放卵を阻害する現象や部分排卵が頻発することが問題となっている(図1)。しかし、天然魚雌を用いた場合ではほとんど観察されず、人工養成魚雌は排卵・放卵に何らかの問題を抱えている事は明らかである。ホルモンを用いた成熟誘導の方法は天然魚と人工養成魚で共通であるため、人工養成魚の養成方法に問題があるのではないかと考えられるが、原因は不明であった。そこで、成熟誘導開始直前の天然魚と人工養成魚の違いをトランスクリプトミクス解析とメタボロミクス解析を組み合わせた統合オミクス解析により包括的に解明し原因究明を目指すことを本研究の目的とした。
成果の内容・特徴トランスクリプトミクス解析およびRT-qPCRによる検証の結果、人工養成魚脳での黄体形成ホルモン、 成長ホルモン(GH)発現量が天然魚に比べて顕著に低かった。また、人工養成魚肝臓ではGHによって転写が活性化され、ステロイドホルモンを運搬する働きをする性ホルモン結合グロブリン(Shbg)の発現量が顕著に低かった。また、いくつかのステロイド合成に関わる酵素の遺伝子発現量に天然魚と人工養成魚間で違いがあった(図2)。血中中性脂肪量が人工養成魚の方で顕著に高かったが、血中コレステロール、血中リン脂質量には違いが無かった。メタボロミクス解析の結果、人工養成魚の肝臓中に天然魚の数倍程度のグルコース1リン酸とマルトースが検出された。これらの結果から、人工養成魚は天然魚と比べて高脂血症や糖尿病の様な症状を呈していることが明らかとなった。
成果の活用面・留意点人工養成魚の養成時に用いた市販飼料には糖質(デンプン)が非常に多く含まれている。デンプンの過剰摂取が高脂血症や糖尿病の様な症状を呈している主な原因と考えられた。他動物でも、肥満や糖尿病といったメタボリックシンドローム、またメタボリックシンドロームが重篤化したものと考えられているクッシング症候群の雌は排卵不全や発情の停止などの症状を示すことが知られている。ウナギでも糖質の過剰摂取は繁殖に悪影響を及ぼすのではないかと考えられた。今後はデンプン含有量の少ない飼料で養成するという対策が考えられた。
予算区分交付金
研究期間2016~2019
研究担当者樋口理人、馬久地みゆき、羽野健志、今泉均
発表論文PLOSONE (2019, https://doi.org/10.1371/journal.pone.0209063)
発行年度2019
オリジナルURLhttp://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=8389&YEAR=2019
収録データベース研究成果情報

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