有用ホンダワラ類の新たな種苗生産法に関する研究−モデル種における不定胚形成の誘導とその過程観察−

有用ホンダワラ類の新たな種苗生産法に関する研究−モデル種における不定胚形成の誘導とその過程観察−

タイトル有用ホンダワラ類の新たな種苗生産法に関する研究−モデル種における不定胚形成の誘導とその過程観察−
要約培養中のホンダワラ類で観察される“不定胚”形成について、ヒイラギモクをモデル種として人為的な誘導に成功した。温度条件の制御により通常の形態形成(主枝形成)が阻害されると、培養藻体の茎葉から極めて多数の不定胚由来の発芽体が生じた。発芽体は同じ温度条件下で培養した細断葉片からも生じた。本現象を有用ホンダワラ類の新たな種苗生産法に活用すべく、基礎的な研究を積み上げる必要がある。
担当機関(国研)水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所 生産環境部 藻場生産グループ
連絡先0829-55-3563
区分(部会名)水産
専門増養殖技術
研究対象ほんだわら
分類研究
背景・ねらいホンダワラ類は藻場を形成するのみならず、ヒジキやアカモク等に代表される食用利用種を含み、また今後のバイオマス資源としても期待され、その増養殖のニーズは高い。しかし、現在のホンダワラ類の種苗生産は成熟期に放出される幼胚の採取とその育成によっており、その季節的な制約と維持・管理の非効率性が産業規模での展開の障壁となっている。一方、室内培養下のホンダワラ類では、幼体期の茎葉(初期葉)上に幼芽が多数発芽し、独立した個体として成長する特異な現象がみられることがある。同現象は、葉の組織細胞が何らかの要因で脱分化を起こし、‘不定胚’として発生を開始したものと推測され、種苗生産への応用の可能性が示唆された(吉田 2002)。しかし、不定胚の形成はこれまで培養下で偶然に観察される現象に過ぎず、その人為的な誘導法の確立と生物学的な機構解明が応用的な研究展開の上で課題であった。
成果の内容・特徴以下の実験および観察から、ホンダワラ類においては、1)生活環の進行にともなう形態形成は、培養温度(および光周期)条件によって制御できること、2)不定胚の形成は温度条件等により通常の形態形成が妨げられた場合に起こること、3)不定胚の形成には葉の髄層細胞が関与していること、等が示唆された。宮崎県産および愛媛県産のヒイラギモクの幼胚を採集し、温度24℃、光量100μmol m-2 s-1、12時間明期‐12時間暗期の条件で培養した。茎葉が形成された後は通気し、温度のみ複数の条件(15、18、21、24、27℃)を設定し培養を継続した。21℃以下では藻体は茎葉に代わって主枝を形成し、直立的な成長を開始した。一方、24℃以上では主枝は形成されず、そのまま培養を継続すると茎葉の表面から多数の発芽体が出現し(図1)、2cm2程度の茎葉から100個体を超える発芽体が得られた。茎葉から落下した発芽体は数日後には仮根を形成し、正常な成長を開始した(図2)。発芽体は細断した茎葉からも生じ、その発出は葉断面の髄層細胞部から起こっていたことから、不定胚の形成には髄層細胞が関与していると考えられた。
成果の活用面・留意点他種を用いて同様の実験を行い、本研究で観察した現象がホンダワラ類において広くみられるかどうか確認する必要がある。また、細胞学的な手法により髄層細胞から不定胚が形成される過程を詳細に解明する等の基礎研究とともに、不定胚を活用した種苗生産の効率性、実用性の評価等の研究(図3)も進める必要がある。
予算区分科学研究費助成事業(挑戦的萌芽研究)
研究期間2016~2018
研究担当者吉田吾郎
発表論文平成30年度日本藻類学会京都大会(口頭発表)
発行年度2019
オリジナルURLhttp://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=8394&YEAR=2019
収録データベース研究成果情報

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