摘要 | 麦類や寒地型牧草等の越冬性作物は、秋季から冬季にかけての低温や日照等の刺激により越冬性を増大させる。この過程をハードニングといい、現象面ではよく知られているもののその機構についてはほとんど解明されていない。本研究では麦類及びイタリアンライグラスを材料にして、これまでの研究から越冬性と密接に関連することが知られているフルクトース重合体(フルクタン)について、ハードニング中の蓄積機構について調査した。蓄積機構はフルクタンを合成する酵素及び分解する酵素の動態を調査して解明を進めた。なお本試験は人工気象条件下で試験を行ったため、予備的に越冬性の増大程度を調査し、設定した人工気象条件下でも充分にハードニングが起こることを確認したうえで試験を実施した。酵素抽出・活性測定法の開発をするために、酵素の温度・基質濃度に対する反応、至適pHなどの特性を各酵素、各植物、各品種について調査した。また酵素活性は、酵素反応後の生成物を高速液体クロマトグラフで測定する方法を開発した。これら測定法によりフルクタン関与酵素の動態について調査した結果、ハ−ドニングにより合成酵素が活性化すると同時に分解酵素の活性が低下して、フルクタンの蓄積が進行することが判明した。また、小麦では酵素活性の品種間差が認められ、フルクタン蓄積の品種間差の発現には分解酵素の抑制が重要であることが判明した。これらの成果は、国際研究集会、日本作物学会等で発表した。 |