摘要 | メキシコの農業をめぐる環境劣化の現状とこれに関連した農業研究の現状を調査した。ソノラ州の地下水潅漑地域では、地下水位の低下が著しく、潅漑コストの高騰により耕作放棄面積が拡大している。耕作継続地では、従来のコムギや綿花の栽培面積が減少し、潅漑効率の高い野菜や果実の栽培が増加する傾向である。ソノラ州の大規模開水路潅漑地区では、用水路と排水路の分離により耕地への塩類集積を防止していた。ヌエボ・レオン州の天水地域は、自然草地が大部分を占め、牧畜が主要な地域であるが、家畜の過放牧により土壌侵食を受け易い地域が拡大している。国立森林農牧研究所(INIFAP)はメキシコの森林農牧業に関する試験研究全般を統括し、8つの地域研究センター、101カ所の試験場と6つの専門別研究センターを設置している。INIFAPはこれまで多数の優良作物品種の育成など、農業の発展と食料確保に貢献してきたが、最近では農業生産の進捗状況の停滞と人口の急速な増加により、農業環境の劣化と食料輸入の増加を招いている。この状況を打開するために、INIFAPは食料自給、外貨獲得、生産と自然資源の維持保全の技術開発を目標に研究を推進している。高収量で病害抵抗性に優れた新しいトウモロコシ品種の導入や栽培技術、潅漑水の効率的利用技術、農耕地の荒廃防止技術、耕地の生産性向上技術の開発等を主要な研究課題として取り組んでいる。 |