摘要 | 微水系酵素反応は加水分解反応を抑え、通常の反応の逆反応活性が高まるなど利点を有する。ヘキサン中でトリパルミチンとステアリン酸のエステル交換を対象にして、界面活性剤で修飾し親油性を高めたリパーゼを用いることにより反応が著しく促進されることを示してきた。5年度は、その反応機構のモデル化およびシミュレーションを行った。本系での水濃度は25mg/Lと低濃度で、ジグリセリドの生成は6wt%以下であった。トリグリセリドの1、3位の脂肪酸と遊離の脂肪酸が交換される2基質・2生成物間の平衡反応をモデルとして採用した。正・逆方向の反応速度は速度定数kと濃度および組み合わせの積で表現できるものとした。関係する5成分の微分方程式を解析し、解を導くことができた。得られた式を種々の酵素濃度でのバッチ反応実験結果に適用することで、反応速度定数がえられた。反応速度定数kは、酵素濃度と一次に相関し、酵素濃度で規格化した比速度定数k*を求められた。パラメータとしてk*のみを用いて、0.93−1.85g/Lの広範囲の酵素濃度での各成分の時間変化を良好にシミュレーションすることができた。このk*は酵素活性の簡便な評価法となると思われる。 |