摘要 | 石油危機直後、燃料費が高騰したためA重油に安価なC重油を混合したA/Cブレンド油が中・大型漁船の一部で使用されるようになった。これらの漁船の実態調査を実施して、ブレンド油を使用するための設備、ブレンド油使用による機関性能の変化、燃料消費の増大、機関部品の損耗状況などを調べた。機関への対策及び使用条件とブレンド油の性状が機関に及ぼす影響を明らかにした。これらを基にブレンド油採用による経済効果を新造船と既存船の場合について保守管理負荷も含めて評価した結果、新造船では経済効果が高いが改造を伴う既存船については経済効果が期待できないことがわかった。A重油価格が安定しC重油との価格差が縮った現在ではA/Cブレンド油の優位性はなくなった。また、近年では産業構造の変化や公害規制の強化などによって軽質留分の石油製品の需要が増加している。これに伴って、A重油基材に重質油の分解留分が混入される結果、漁船に着火性の劣る(セタン価が低い)燃料が供給されようとしている。そこで燃料のセタン価と機関性能の関係について実験した。低セタン価燃料の使用によって、機関の始動が困難となり、振動・騒音が増加し、さらにNOx排出量が増加することを明らかにした。これらの成果は漁船用燃料の最低セタン価を規定した全漁連燃料油規格等に反映され、漁業者へ良質な燃料を供給することで漁船の安全運航に貢献している。 |