摘要 | 5年は、4年に引き続き沿岸小型漁船ならびに小型艇の2船型を対象に、既存の船体運動推定法の結果と模型試験で得られた向い波状態の運動振幅および運動方程式の流体力係数について比較し、その推定精度を検証した。その結果、運動振幅については、端部影響を考慮したOSM法が最も実験値に近い推定結果をあたえること、フルード数0.8程度の速度域の船体運動の推定精度向上を図るには、流体力の推定精度の改善が必要であることなどが明らかになった。一方、排水量型漁船の代表である中型漁船は、比較的厳しい波浪環境下の耐航性能が問題となることから、大振幅で動揺する場合の流体力を推定する理論的計算法を開発した。これまでの研究で、漁船の耐航性能を評価する場合に最も厳しい条件の一つである向い波状態の船体運動推定法について検討し、既存の推定法はフルード数0.5程度の船速までは、一部の船型を除き実用的には良好な推定結果を与えることなどがわかった。また、船尾形状、載荷状態あるいは運動振幅の大きさによっては推定精度が落ちる場合があることがわかり、船型形状を正確に取り入れた新たな理論的計算法を開発し、推定法の改善を図った。今後、斜め波状態など向い波以外の状態について推定法の広範な検証が必要であるほか、まぐろ漁船など一部の船種にとどまった耐航性能の評価基準の見直しなどが残された問題である。 |