摘要 | これまでに得られたトロール調査結果や文献等に基づき、東シナ海陸棚斜面域と四国沖太平洋海域の魚類相の関連について検討した。その結果、東シナ海陸棚斜面及び陸棚縁辺域と高知沖並びに隣接海域の魚類相は類似性が高いことが明らかになった。このことは、ハナナガソコホウボウ、ウロコソコホウボウ、マエソS型、アカフウリュウウオ等の分布が、両海域に限られていることからもうかがえる。また、東シナ海及び高知産のバケメイタガレイの背鰭、臀鰭条数と脊椎骨数の平均値は、それぞれ77;55;36であるが、日本海西部海域産のものはこれより少なく、72;54;35である。同属のホンメイタガレイの体節的形質も同様の傾向が認められた。同一種で体節的形質に地理的傾斜が現れる場合、一般に北高南低型を示す。したがって、メイタガレイ類の体節的形質の地理的傾斜にこれまでと逆の南高北低現象がみられたことは、両者がそれぞれ異なる系統に属することを示唆する。このように、海域間の魚類相の比較を種以下のレベルまで下げて行うことにより、同一種内の類縁(系統分化)を知ることができ、現在の地形及び環境の歴史的変遷との対応を考察することが可能になり、生物地理や系統群の解明にも役立つ。 |