摘要 | 当年度はこれまでに採集した日本産ナラタケ属菌と、ヨーロッパ・北アメリカのテスター菌株との交配試験を行い、生物学的種の異同を判別した。その結果、テスターの5生物学的種と交配する菌株が得られた。そのうち、ならたけ病害地から分離された菌株には、海外でも病原性が強いとされるArmillaria melleaおよびA. ostoyaeと交配するものが多かった。野外調査では、カシノナガキクイの発生がみられるナラ林において、ナラ枯損へのならたけ属菌の関与を調べるために、枯死木およびほとんど脱葉し枯死木に近い個体の地際部の菌糸膜の有無を調査した。その結果、菌糸膜が観察されたものは17本中4本で、ナラタケ属菌が枯死に関与している可能性は否定はできないが少ないと考えられた。また、東北地方を中心にナラタケ属菌の野外発生実態の調査及び菌株の採集を行い、新たに種の判別に供する菌株を得た。温室では、鉢植えのアカマツ・ヒノキ・ナラ苗木への接種試験を行った。今年度中にはヒノキ1本が枯死したのみで、昨年度の7割近い枯死と全く異なる結果となった。接種試験は方法に改良を加え継続するが、大量の鉢植え苗を均一な環境下で栽培するため、より広く設備の充実した温室が必要である。 |