摘要 | 海洋大循環機構の解明のため、日本東方海域における表層から深層にいたる海洋構造とその変動を明らかにすることを目的とした。深層循環の解明には、金華山沖の水深約3000mの海底に係留系を設置し、2500m及び1500m層の流速を1991年10月〜1993年10月まで行った。この結果、2500m層の流速は、海底地形に沿った南南西もしくは北北東の流れが卓越し、年平均で南西方向に1.7〜0.6cm/sであり、金華山沖の深層では南よりの流れが卓越していた。流速の南北成分は、−15.6〜+11.9cm/sの間にあり、冬季(2〜3月)および夏季(6〜8月)に南よりの流れの強まりが認められた。南よりの流れの強まりは、親潮第1分枝の南下の強まる時期の1〜3か月前に認められた。深層水の流れの影響が、1500m層の流速変化に認められる場合があった。中層循環に関しては、塩分極小層に着目した観測を行った。この結果、親潮分枝を南下した親潮水が黒潮続流と合流し、東方へ流れる間に塩分極小が形成される過程が明らかとなった。黒潮続流域で塩分極小構造を形成する源になった低渦位・低塩分水の起源は、オホーツク海にあることが明らかとなった。オホーツク海から流出した低渦位・低塩分水は西部亜寒帯環流の水と混合し、親潮水を形成するほか、その根幹部は千島列島・北海道沿いに西向きに流れ、その後、大きく変質しながら親潮分枝域を南下していた。 |