摘要 | 牛の脂肪肝はケトージス等の代謝病、繁殖障害、日和見感染症等の引き金になるとされており、脂肪肝の発症機構及びそれに起因する生体機能の異常を知ることは、生産病を統一的に理解する上で重要と思われる。脂肪肝では肝臓からのリポ蛋白質の分泌量が低下する。リポ蛋白質は中性脂肪(トリグリセリド、TG)、コレステロール、リン脂質等の輸送に関与し、末梢組織の機能維持に必須である。例えば、コレステロールは低密度リポ蛋白質(LDL)で輸送され、LDLレセプターを介して黄体、副腎皮質等に取り込まれ、ステロイドホルモン合成に利用される。脂肪肝での繁殖障害(妊娠しにくくなること)はコレステロール供給が減少するため、黄体でのプロゲステロン産生が低下することに拠るとされている。脂肪肝の研究は初期の臨床病理学的研究に続き、生化学的手法を用いた発症機構解明の研究が緒に就いたばかりの状況にあり、リポ蛋白質代謝異常に起因する末梢組織の病態生化学的研究はほとんど手を付けられていない。本研究の目的は、脂肪肝牛のリポ蛋白質の代謝異常をリポ蛋白質の組成変化より調べること、およびこれらの変化が末梢組織の機能にどう影響するかをリポ蛋白質のレセプター動態等により明らかにすることにある。 |