摘要 | ・ 環境汚染物質として流入する鉛やカドミウムの蓄積実態を明らかにするため、茨城県内の森林において土壌や植物体での蓄積量を調べた結果、最表層の土壌には下層土に比べて鉛が6倍、カドミウムが15倍の濃度を示し、両元素は表層土壌に高濃度で蓄積していることを明らかにした。鉛について同位体分析を行った結果から、大気や降雨を通じて外部から流入した鉛は、主に土壌最表層に蓄積するが、根から吸収されて樹体にも蓄積し、一部は落葉として土壌に還り生態系内を循環していることを明らかにした。気候変動に伴う土壌の乾燥化が樹木細根の動態に与える影響を明らかにするため、28年生スギ人工林に降雨遮断区と対象区を設置して、スギ細根の生産・枯死量を比較した結果、降雨遮断区の細根量は4ヶ月後に対象区の30%にまで減少し、細根枯死量は6ヶ月後には対象区の2倍に上昇した。これらのことから、スギの場合、細根の現存量や枯死量の増加を指標として、土壌の乾燥ストレスを評価できる可能性があることを示した。 ・ 筑波共同試験地の森林小流域において、流出水の水素安定同位体比(δD)を解析した結果、出水全期間の流出量(mm)の77%は以前に降った“古い水”で形成されていたが、ピーク流量(mm/h)の60%は当該降雨による“新しい水”で占められていることを明らかにした。常陸太田試験地のスギ・ヒノキ林において、降雨の流入から流出に至る各段階の水及び樹木の樹液のδDを解析し、150cmより浅い土壌水のδDは降雨のδDの影響を強く受けていること、スギ樹液のδDはヒノキに比べて値が低く土壌水に近いこと等を明らかにした。これらのことから、流域水収支や森林内での水移動過程の解明に安定同位体比を指標とした解析が有効であることを示した。タワーフラックス観測データについて、乱流変動法による熱フラックス解析を行い、エネルギー収支における乱流フラックスの過小評価の存在を確認し、潜熱フラックスの精査の必要性を明らかにした。3次元乱流シミュレーションモデルの改良を行い、エアロゾル等の大気中の微粒子の濃度変化や拡散過程の解析を可能とした。 |