摘要 | 温室効果ガスに関して、中国における温室効果ガス発生抑制技術のほ場試験から、水稲−小麦作付け体系における有機物管理と畑栽培における硝化抑制剤の使用の有効性がコスト面も含めて示された。また、わが国の農耕地N2O 発生データベースを整備・解析し、各排出カテゴリーの排出係数改訂値を提案し、わが国温室効果ガスインベントリ報告書に盛り込まれた。さらに、昨年度までの成果である、世界の水田から発生するメタンの新しい算定法とデフォルト値が2006 年IPCC 改訂ガイドラインに採用された。炭素・窒素広域収支モデルと有機物動態統合モデルから構成される炭素・窒素フローモデルの基本設計を行った。土壌有機物動態に関して、土壌データに基づくモデル検証を行い、稲わら持ち出しと有機物施用のシナリオを用いて全国の水田炭素蓄積量の変化を試算し、有機物施用が炭素蓄積に有効であることを示した。また有機物分解の温度応答性を明らかにするため、圃場において土壌加温試験を行う手法を開発した。さらに中国の省・地区別統計、土壌炭素データ等を収集整備した。流域における窒素の流出について、茶園−水田土地利用連鎖系内の脱窒活性が高い土層は洪積・沖積土壌の境界付近に局所的に分布することを明らかにした。下層土を通じたリンの流出について、粘土質転換畑から暗渠流出する流出リンの大部分は作土−耕盤層境界に停滞した懸濁態リンが亀裂を通じて運ばれたものであるが、黄色土茶園では流出リンのほとんどが溶存態であることを明らかにした。 |