(2)昆虫の乾燥耐性機構の解明と利用技術の開発

(2)昆虫の乾燥耐性機構の解明と利用技術の開発

課題番号2008010720
研究機関名農業生物資源研究所
研究期間2006-2010
年度2008
大課題2)昆虫の環境適応機構の解明と制御技術の開発
中課題(2)昆虫の乾燥耐性機構の解明と利用技術の開発
小課題(2)昆虫の乾燥耐性機構の解明と利用技術の開発
大項目第2 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するためとるべき措置
中項目1.試験及び研究並びに調査
摘要1.乾燥に伴う塩ストレスの過程で幼虫体内に発生する活性酸素を可視化することができた。凍結切片を作成し免疫組織学的な解析を行い乾燥過程の生体成分の損傷と覚醒時の修復の様子を観察した。すなわちDNA塩基の8-オキソグアニン化及び脂質の過酸化脂質化が乾燥ストレスによって生じ、水戻し後にそれらが回復されることを確認した。2.乾燥過程で発生する活性酸素によるDNAの二本鎖切断が生じていること、そして再水和後の蘇生過程で損傷したDNAを修正していることを19年度に明らかとなったが、20年度はこの修復能とネムリユスリカが放射線に耐性をもつことがリンクしていること、すなわち放射線の照射を受けDNAに損傷を受けたネムリユスリカ幼虫は、すでにクリプトビオシスのために備えているDNA修復能を発動させていると想定し、この仮説を証明するために競争的研究資金「原子力イニシアティブ課題」に応募したところ採択された。DNA修復、抗酸化、アポトーシスなどに関わる遺伝子を網羅的に解析及びスクリーニングするためにDNAチップを作成しマイクロアレイ解析を行うために様々なストレス(ガンマー線、イオンビーム及び乾燥)を与えたときに発現する遺伝子の平均化ライブラリーを構築した。3.ネムリユスリカが唯一クリプトビオシス能力を持つ昆虫種とされている。オーストラリアの半乾燥地帯の岩盤にできた水たまりにも2種類のユスリカ種が生息し乾燥耐性を有するが、かれらは皮膚のクチクラ層を厚くし、身体からの脱水を阻止する戦略を採用しており、脱水速度は遅延するものの乾燥ストレスに伴うトレハロースの誘導はなく完全に脱水後、再水和しても蘇生しなかった。クリプトビオシスがなぜアフリカ大陸で進化したのか大変興味深い。ネムリユスリカの系統進化の解析は乾燥耐性の分子メカニズムの解明にフィードバックするものと予想される。実際、ネムリユスリカのゲノムやミトコンドリアDNAには進化の過程で乾燥ストレスによってもたらされたと思われるクリプトビオシスに特異的な配列が確認することができる。20年度は、モザンビークの個体群の生息を確認し、他の個体群との比較研究を進めている。4.ロシア科学アカデミーと宇宙ステーション(ISS)で進めているネムリユスリカの宇宙実験で、1年間ISS船外に暴露されたネムリユスリカ幼虫が地球に帰還した。幼虫が梱包されていたポリエチレン容器が溶けて変形していた。想定していた温度を超えた80℃以上の高温に長期間にわたって曝露されたにもかかわらず、幼虫は水戻し後蘇生した。この結果を受けて2009〜2011年に計画されている火星衛星フォボス無人探査ロケットの生物搭載実験にネムリユスリカが採択された。乾燥ストレスを含む極限環境から生体成分を保護する因子のひとつとしてトレハロースのガラス化が重要であることを明らかにした。幼虫体内のトレハロースのガラス転移温度を超えた温度に暴露されたにもかかわらず生体成分が保護された原因については現在検討中である。
研究分担(独)農業生物資源研究所,昆虫科学研究領域,乾燥耐性研究ユニット
(独)農業生物資源研究所,昆虫科学研究領域,乾燥耐性研究ユニット
(独)農業生物資源研究所,昆虫科学研究領域,乾燥耐性研究ユニット
協力分担関係国立大学法人鹿児島大学
予算区分技会交付金研究 イノベーション創出事業 文科省・JST競争的資金 その他
業績(1)Genetic compensation of high dose radiation-induced damage in an anhydrobiotic insect
(2)Purification and characterization of silkworm hemocytes by flow cytometry
(3)昆虫の乾燥耐性遺伝子とその利用
(4)Effects of dehydration rate on physiological responses and survival after rehydration in larvae of the anhydrobiotic chironomid
(5)Genome size of termites (Insecta, Dictyoptera, Isoptera) and wood roaches (Insecta, Dictyoptera, Cryptocercidae)
(6)Establishment of a rearing system of the extremotolerant tardigrade Ramazzottius varieornatus: A new model animal for astrobiology
(7)Effects of precocenes on the corpora allata and the JH titer in the damp-wood termite Hodotermopsis sjostedti (Isoptera: Termopsidae)
(8)Effects of drying history on the survival of Polypedilum vanderplanki
(9)Histology of the hormone-producing glands in the damp-wood termite Hodotermopsis sjostedti (Isoptera, Termopsidae): A focus on soldier differentiation
(10)Juvenile hormone titers and caste differentiation in the damp-wood termite Hodotermopsis sjostedti (Isoptera, Termopsidae)
(11)ネムリユスリカのアンヒドロビオシス誘導過程におけるアクアポリンの役割
(12)Molecular cloning and characterization of Tret1-orthologs facilitating trehalose transport insects
(13)Anhydrobiosis in the Sleeping Chironomid, Polypedilum vanderplanki: unique tactics to survive drought
(14)Relationship between dehydration rate and success of anhydrobiosis in the sleeping chironomid, Polypedilum vanderplanki
(15)Expressed sequence TAGs from cDNA library of the sleeping chironomid (Polypedisum vanderplanki) and analysis of mRNAs expression patterns during the induction of anhydrobiosis
(16)Expressed Sequence Tags from cDNA library of the sleeping chironomid (Polypedisum vanderplanki) and analysis of mRNAs expression patterns during the induction of anhydrobiosis
パーマリンクhttps://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3030093468
収録データベース研究課題データベース

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