農業水利システムの水利用・水理機能の診断・性能照査・管理技術の開発

農業水利システムの水利用・水理機能の診断・性能照査・管理技術の開発

課題番号2013023110
研究機関名農業・食品産業技術総合研究機構
研究期間2011-2015
年度2013
研究問題①農業水利施設等の戦略的な再生・保全管理技術の開発
大課題農業水利システムの水利用・水理機能の診断・性能照査・管理技術の開発
中課題農業水利システムの水利用・水理機能の診断・性能照査・管理技術の開発
大項目地域資源活用のための研究開発
中項目(1) 農村における施設・地域資源の維持管理技術の開発
摘要水利施設の機能診断法、補修・更新時の設計・管理法、性能照査法に関してはa) 用水施設保全管理のための緊急放流工の水理設計に関する解析手法の開発について、横越流堰に併設する水位調節ゲートの効果を評価する背水面解析のために、自由水面の大変形を数値計算する目的でSPH法による粒子法を導入し、3次元のソルバーを作成した。またデータ入力支援のために、モデラーで作成したDXFファイルを読み 込み、粒子を生成するプログラムと、解析結果の可視化プログラムを整備した。b) 用水システムと排水システムの統合的表示法の開発と 制御施設の機能評価法について、水位・流量変動等の問題を抽出できる水理機能診断調査票を用いて、更新事業で建設された現場の分水工に水理機能診断を施し、フォーマットの有効性を確認するとともに、分水工改修前後の水理・水利用機能の変遷を定量的に評価するツールとして改良を加えた。c) 水利システムにおけるネットワーク構造のもつ機能を評価するためには、既設水路断面の分割・統合、新たな断 面の追加・廃止、水路区間の単線・複線化、専有・共有化による評価が重要であり、水路の断面や区間に着目する構造的区分と水路の通水性や制御管理性に着目する性能区分から、そのシステムに要求される性能を判断する必要があることを明らかにした。d) 管路破損が頻発 する現地で破面解析を実施し、破断した管路材の周辺では、成長き裂以外にも数mmの小さな多数のき裂を認めるとともに、破断に関する結晶構造上の原因を見出した。また、設計水圧の6割程度の水撃圧であっても、その頻繁な発生により疲労破壊を生じることを明らかにした 。
水利用にかかる機能低下の診断に関しては、a) 頭首工の護床改修工法について、「護床追加」、「底板&護床」、「底板&護床連結」の 各工法を移動床水理実験により比較検討し、「底板&護床連結」が特に効果的であることを見出し、これを改修工法のプロトタイプに選定した。また、頭首工の取水性能を規定する指標として、取水量に着目するだけでなく、維持管理に大きく影響する土砂の動態を考慮する必要を認めた。b) 画像計測による表面流速から流量を推定する手順について、射流の特性に基づき、水深によらず水路諸元のみによりフル ード数を決定し、フルード数をパラメータとして画像計測結果から断面平均流速を求める方法を開発した。また、画像取得や通信の機器として、量産市販製品を用いた実用的な構成案を作成した。
管理労力の脆弱化に対応した維持管理法に関しては、a) 土砂や水草などによる水利用機能低下の問題分析について、設計時に想定されな かった大規模な土砂流入があった現場の分水工とその調整池に対して、水理実験や河床変動解析によって現場の流れと土砂移動状況を再現し、土砂の堆積域が現場での水草の繁茂域に一致することを確認した。b) 用水系の拡幅部直下地点に設置する潜堤状の簡易な構造物によ り、堆積土砂の分布域を従前よりも上流側にシフトできる可能性を見出した。c) 農業水利施設の整備や保全への交流・連携の促進機能と その計画・運用手法の開発について、「(農地の区画形状や用排水施設・農道の有無など)農業生産基盤の条件が農地水保全活動の活動を規定する大きな要因である」とした既往成果を、従来の市町村単位だけでなく、kmメッシュ及び農業集落のいずれの単位でも適用可能であることを確認した。d) 農地水活動の促進を目指して実施する農業生産基盤整備の計画・設計等に活用できる農地水保全活動の取組を促進 する農業生産基盤の条件について、任意の地域について明らかにできる分析手法を、フリーウェアのGISソフト及び一般的な表計算ソフト と全国で既整備の農業基盤情報基礎調査のデータ等を用いる方法として提示した。e) 地域住民の労力負担能力の持続性評価指標の開発に ついて、水利施設の維持管理における地域住民の労力負担能力の持続性を評価する指標として、総戸数、農家1戸当たり属地田面積を合成 した「量的な労力負担能力」と、農家率、農家の高齢化率、寄合回数を合成した「質的な労力負担能力」を開発した。f) 現在(2010年) の量的・質的な労力負担能力の平均値を基準にして事例集落を4グループに分けると、平均値よりも「量的な能力」が高く「質的な能力」 が低いグループ(第Ⅳグループ)には、他のグループに比べて労力負担行動していない集落が多いという特徴を見出した。g) 現在(2010 年)は第Ⅳグループ以外に含まれ、将来(2020年)は第Ⅳグループに推移すると見込まれる集落は、能力の持続性が低い集落であると評価できること、開発した評価指標は、このような集落群に対し、それぞれの持続性低下要因の水準値に応じた支援策の策定やその優先順位の検討に利用できることを見出した。h) 次世代育成を通した水利施設の活用が維持管理に与える効果の解明について、7土地改良区の取組を整理し、これらの土地改良区が次世代育成活動を始めた時期は平成7年〜18年であり、ふるさと水と土保全事業、地域用水機能増進事業な どのソフト事業、21世紀土地改良区創造運動など全国的取組が、活動の契機になっていること、県や町村の補助事業など、賦課金収入以外の財源が次世代育成活動の条件であることを明らかにした。i) 各土地改良区とも、次世代育成活動に取り組むことにより、農業用水(土 地改良区)への理解向上、賦課金徴収率向上、ごみ減少など具体的な効果があること、特に、役員、組合員同士の相互理解や地域住民の意識向上につながったと評価されていることを明らかにした。j) 多気町勢和地域資源保全・活用協議会の事例では、地元小学校がコミュニ ティスクールの指定(文部科学省、平成25年)を受けるなど、次世代育成活動が学校にとっても有効な取組と認識されていること、子どもたちの親世代に積極的な参画が認められ、子育て期にある大人達への啓蒙にも役立てられていることを見出した。
水域特性に応じた最適な水質評価モデル及び地域固有の生物生息に必要な水路の機能水準に関してはa) 操作実験による水理条件等と生物 相の関係解明について、流速の多様性、堆積物の厚さ、水際の複雑さを基とした生息環境の多様性を評価する手法を開発した。b) 魚類の 移動障害となる落差を明らかにするためのモニタリングを開始し、従来工法及び環境配慮が講じられた水路区間の魚類相の特徴を明らかにした。c) 魚類・両生類の生息条件に及ぼす農法の影響解明に向けて、水田内の魚類調査手法の配慮事項を定めるとともに、茨城県・石川 県の対象水田における魚類・両生類の生息実態を明らかにした。d) 生態系及び遺伝子多様性の定量的評価に向けて、水生生物のサンプリ ングと炭素・窒素安定同位体分析を開始し、これら同位体比が生態系の多様性の指標となり得ることを確認した。e) ニホンアカガエルの 成体及び卵塊をサンプリングし、産卵場の空間分布の実態を明らかにした。f) 幅広水路や魚巣ブロック等の生態系配慮施設は、遺伝子多 様性レベルが3面コンクリート水路より高く、自然環境区間と同程度の生物多様性となることを明らかにした。g) ラオス国在来2魚種のマ イクロサテライトDNAマーカーを単離し、遺伝的多様性の解析に利用できることを確認した。h) 生態系及び遺伝子多様性の定量的評価に向けて、農業排水路における生物群集のメタゲノム分析手法を構築し、その手法が適用可能であることを確認した。i) 懸濁態と溶存態のリ ン動態の調査と周辺水環境に及ぼす影響要因の解明について、リンの抽出方法を決定し、溶存態リンの濃度が低く、移動するリンの大半が懸濁態であったこと、及び底質中よりも浮遊砂中のリンの割合が高く、浮遊砂の動態が周辺環境へ影響を及ぼすことを明らかにした。j) ハビタット(生息環境)の質的評価とハビタット間移出入を考慮した個体群動態モデルの開発について、環境収容力Kの計算過程に水深、 流れ、植生被度の各SIモデル及びそれら合成値(CSI)を組み込み、プログラムを改良した。k) ハビタットの質を向上させる環境修復工について、操作実験前の水路における魚類の生息分布と環境因子の実態を明らかにし、流速分布を簡便に把握するために画像解析と数値計算による手法が適用できることを確認した。

このほか、a) 国営土地改良事業地区調査(関川二期地区)において、笹ヶ峰ダム下流に新設する小水力発電設備への導流に伴う分水槽設 置にあたり、分水槽の整流効果を水理模型実験により検証することで、効果的な分水槽の設計案を提示した。
研究分担高木強治
予算区分技会交付金研究 委託プロ[革新的低コストプロ] 委託プロ[気候変動プロ] 文科省[科研費] その他
業績(1)オブジェクト指向に基づく水撃解析プログラムの開発とその保守管理の提案
(2)調整池を含む用水路系での用水供給に対する需要者満足に関する検証
(3)都市化地域での水路の部分改修が水路システムに及ぼす影響
(4)Characterization of twenty-four polymorphic microsatellite loci of Rasbora borapetensis
(5)排水管理時における用水制御施設の水理機能診断
(6)Development of nineteen novel polymorphic microsatellite loci of Clupeichthys aesarnensis
(7)水域ネットワーク再生に向けた魚類個体群動態予測に関する基礎的研究
(8)水利システムのリスク評価と水理解析結果の可視化
(9)弾性波検出による農業用パイプラインの水利機能診断法の開発
(10)用排水路の維持管理における集落の労力負担能力の継続性評価−2010年世界農林業センサス農業集落カードの山形県のデータを用いた事例−
(11)コンクリート水路によるカエル類の移動障害と個体群保全に関する研究
(12)河川生態系における流速の多様化がもたらす付着藻類の多様性
(13)簡易乳酸測定器による魚類の遊泳運動負荷評価の予備検討
(14)人為的撹乱を受けない水田環境における食物網と物質フロー
(15)農業用パイプラインの数値数理解析のためのXMLを用いたデータ管理手法の開発
(16)Population Size and Density of Oriental Weather Loach Misgurnus anguillicaudatus in Paddy Plots Estimated by Removal and Mark-recapture Experiments
(17)Decrease of Egg-masses for the Japanese Brown Frog (Rana japonica) after Land Consolidation Project in Paddy Field Area, Japan
(18)水路の維持管理における労力負担行動の継続性評価指標
(19)圃場整備事業前後のニホンアカガエルの卵塊数の比較
(20)用水路系の信頼性低下を引き起こす主要地点の分析手法−上流水位制御方式の用水路系での用水供給実態の分析例−
(21)Development of a simple method of discrimination between the Dojo and Kara-dojo loaches for the conservation of Japan’s rural ecosystem
(22)カエル類のコンクリート水路への転落と脱出工の現状と課題
(23)開水路からパイプラインに移行する水路システムの放水工改修に関する水理機能診断
(24)水路の複線化に基づく水路ネットワークの機能強化
パーマリンクhttps://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3030203629
収録データベース研究課題データベース

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